1200万円の女たち。MIGMA SHELTER、コロナとかく戦えり
MIGMA SHELTERは2017年に結成されたアイドルグループ。「頭ぶっ壊れるまで踊れ!」をキャッチコピーに持つ彼女たちは、ドラッギーでサイケデリックなトランスミュージックを武器にライブアイドルシーンで大きな存在感を示している。そして2019年11月には、今春リリース予定だったニューアルバム『ALICE』の制作に向けたクラウドファンディングを組成。300万円の目標金額を設定していたところ、今年1月の〆切までにその4倍強となる1203万3000円の支援を集め、大きな話題を呼んだ。
――今年1月、ニューアルバム『ALICE』の制作に向けて組成されたクラウドファンディングに1200万円もの支援が集まったときってどういうお気持ちでした?
レーレ:「みなさんがこんなにMIGMA SHELTERに期待してくれているんだ」というのが数字として目に見えてわかったので、「いいアルバムにしなきゃ」「MIGMA SHELTER自体ももっと上にいかなきゃ」という、いい意味でのプレッシャーを感じていました。
ブラジル:確かに「売れた! うれしい」みたいなうれしさじゃなくて「こんなに愛されていたんだ」といううれしさと、みんなの期待を裏切りたくないというプレッシャーはありました。
タマネ:私は、ブちゃん(ブラジル)とレちゃん(レーレ)と同じように「これだけ応援してもらえているんだから、がんばらなきゃ」という気持ちにはなったんですけど、それ以上に金額がすごすぎて、なんだかよくわからなくなったというか……。気持ちが現実に追いついてなかったです(笑)。
――ところがそれからほどなく新型コロナの騒動があって、ツアーを全公演中止するなど、グループの活動を縮小せざるを得なくなってしまいました。特に大学受験の準備のために2月まで活動を休止していたタマネさんは出鼻をくじかれたかっこうになってしまった。
タマネ:ようやく復帰できたタイミングだったのに、春のライブの予定がどんどんなくなっちゃったから「どうしよう?」「えっ?????」みたいな気持ちで。クラウドファンディングのときと同じようにやっぱり気持ちが追いつかなかったです。
レーレ: タちゃん(タマネ)が復活したこともあってMIGMA SHELTER自体、すごくいい波に乗っている感じがしていたし、特にツアーって半年とか1年前からいろんなスタッフさんががんばってくれるからできることだから、それがパーになっちゃったのは悔しかったです。
それに3月21日のツアー初日の大阪・味園ユニバースでのレイブ(MIGMA SHELTERは自身のライブを「レイブ」と称する)が無観客配信になっちゃったときもまだ「4月以降はがんばろうね」「今度はお客さんを呼んで大阪でレイブしよう」って話していたから、4月に入って世間が本格的に自粛ムードになっちゃったのは本当にショックでした。こんなの初めてのことだったから。
――まさか「感染症が流行っているからあんまり外に出ないでください」なんて言われることになるとは思ってなかったですよね。
ブラジル:ただ「結果的に」ではあるんですけど、よかったなって思えることもあって。たとえば味園ユニバースの配信レイブも実際に会場に入れるお客さんの数の10倍くらいの人が観てくれたんですよ。
レーレ:確かに3月の配信レイブを通じてMIGMA SHELTERを知らなかった人たちにも触れてもらえたのは、自粛期間の数少ないうれしいできごとだったかも。
――一方、プライベートでの心配はなかった?
タマネ:特に私と同じ新入生……あと新社会人の人もそうだった思うんですけど、せっかくの「新生活が始まるよ」という時期だったのに、とにかくなにも始まらなくて。私生活でも「あれっ? なにもない」っていう不安に襲われていました。
――今、大学の講義ってどうやっているんですか?
タマネ:オンデマンドですね。ネットに上がっている先生の講義の映像を観て、レポートや課題を送ってます。
――ブラジルさんも大学生ですよね?
ブラジル:私はZoomでのリアルタイムのオンライン講義とオンデマンドの講義を半々で受けてます。ただ、授業がオンラインになったら逆にヒマじゃなくなっちゃって。大学に通えていたときなら、数学の授業は出れば単位をくれていたはずなのに……。
――出席さえしていれば楽勝だからって選択した授業なのに、その出席確認のためにレポートなんかを提出しなきゃいけなくなった?
ブラジル:だから忙しいんです……。
――レーレさんはこの自粛期間、なにをしてました?
レーレ:なにをしてたんですかね?
――知りませんよ!(笑)
レーレ: MIGMA SHELTERくらいしかやることのない毎日を送っているから、もともとプライベートらしいプライベートはあまりなくて。自粛期間中もツイキャスとかでの配信をいっぱいやっていただけですし。
あとはオンライン特典会で買ってもらったチェキにサインを入れたり、なんかそういう通販の準備みたいな作業をひらすらやっていた気がします。……あっ、でも時間ができたから、ちょっとネイルをがんばってみました。
――でもそれも「かわいくい続ける」という、ある種アイドルの務めですよね。だからみなさんがやっていたことは、基本的にお勉強かMIGMA SHELTERとしての活動か。マジメだなあ、という印象があります。
タマネ:いや、みんなは違うと思うんですけど、私は、レちゃんが言っていたチェキにサインを書いたり、クラウドファンディングのリターン用の動画を撮ったりっていうことが、なぜかとにかくできなくて……。「まだチェキの宿題が残ってるのに」という罪悪感と義務感が常にあったから「時間があるからゲームだ!」って気持ちになれなかったんです(笑)。
――そして7月9日に、3月の味園ユニバース公演以降、約4カ月ぶりとなる無観客配信レイブ「RAVE AGAINST 01」が東京・LIQUIDROOMで行われました。
一同:はい。
――その公演はたくさんの視聴者を集めたし、ステージでのみなさんの姿をダイナミックに切り取った映像とPAは大きな話題を呼びました。
レーレ:でもそれはLIQUIDROOMさんやカメラマンさんや音響さんや照明さんが素晴らしいから評価していただいていることであって、ウチらのパフォーマンスで盛り上げたわけではないんですよね。
私たち自身はひさしぶりのレイブを楽しめたし、ナちゃん(ナーナナラ)の活動休止前最後のレイブだったから、彼女に「ゆっくり休んでね」って言えてよかったなとも思っているんですけど、課題もたくさん見つかりました。
ブラジル:あと『ALICE』の収録曲を何曲か初披露したことを喜んでもらえたというか。やっぱり私たちの実力をホメていただいたわけではないな、と思ってます。
ところがその直後、世界は新型コロナの脅威に晒されることに。MIGMA SHELTERはアルバムリリースは今夏まで延期され、そのリリースツアーは軒並み中止を余儀なくされた。まさにファンの期待を一身に背負った刹那、活動の縮小を強いられた彼女たちは、今なにを思うのか? 『不思議の国のアリス』の世界をモチーフにしたという力作コンセプトアルバムの聴きどころとは? 現在活動休止中のナーナナラを除く、ミミミユ、ブラジル、ユブネ、タマネ、レーレの5人に聞いた。
ブラジル、タマネ&レーレインタビュー あまりある期待に応えたかった矢先のコロナ禍
「あの授業は出れば単位をくれたはずなのに」(ブラジル)
##(商品情報〜タイトル)
『ALICE』
##(商品情報〜収録内容)
01. In Wonderland
02. Rabiddo
03. Drops
04. Egg Head
05. Y
06. It doesn't matter
07. Unbirthday
08. Road
09. QUEEN
10. My Wonderland
##(Amazonリンク)
https://www.amazon.co.jp/dp/B08F5HS7XD/
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