更新日:2021年11月26日 18:20
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ストロングゼロは酒ではない…人生だ。愛深き僕の前に立ちふさがった3人の侍たち

ossann1【おっさんは二度死ぬ 2nd season】

晴れときどきストロングゼロ

 ストロングゼロと出会ったのは、もうずいぶんと前だったように思う。それこそ10年前とまではいかないけれども、それに匹敵するくらい、7年か8年くらい前だろうか。このお酒は今でこそ酒に溺れる人間のアイコンとして使われ、親しまれているところがあるが、そうなるずっと前からストロングゼロに出会い、愛していた。  その日は、自転車をこいで近所のドラッグストアに向かっていた。大型のドラッグストアで、医薬品だけでなく化粧品や日用品、生鮮食品や総菜まで売っている店だ。もちろん、酒類もかなり力を入れて販売している。  僕はビールが苦手だ。お店で飲むジョッキの生ビールはいけても瓶ビールや缶ビールをあまり美味しいと感じない。そういった事情もあって家で飲む際はもっぱらチューハイ系のお酒を選択していた。  酒類コーナーを眺めると、チューハイ系のお酒はけっこう種類が多い。ビールと異なりフレーバーという概念があるので、同じブランドのものでもレモン味、こちらはグレープ味と展開に広がりがあるのだ。  今日はどのお酒を行きましょうかね、とチューハイコーナーを眺める。そこで出会ったのがストロングゼロだった。

その時、僕の中で革命ののろしが上がった

「ストロング……ゼロ……?」  強いことを意味する「ストロング」と虚無を意味する「ゼロ」、相反する単語が並んでいることに違和感を覚えた。「矛盾」の語源である故事に出会ったみたいな感覚を覚えたのだ。 「強い虚無? なんだか切ないな」  そう呟きながら、小さな350ml缶を手にする。ズシリと重い手応えがあった。なんだかそれは他の酒よりも重く、痛みすら感じるような感覚があった。例えるならば、ずっとずっと古い傷跡を撫でたような、そんな感覚に近かった。  購入し、家に帰ってそれを飲んでみる。これはもう信じられないくらいの衝撃だった。美味い、安い、そしてすぐに酔う。とんでもない酒がこの世に誕生したと感動した。  インターネット革命という言葉がある。この世界はインターネットの誕生を境にそれ以前とそれ以後に大きく分けられる。その存在によって大きく世界が変わったものを「革命」と呼ぶのだ。そういった意味では産業界に革命を起こした産業革命、エロビデオ界に革命を起こした「ミニモミ。Fuckだぴょん!」革命と、それぞれが大きなインパクトをその世界に残していったわけだ。それと同等、これはもう酒の世界におけるストロングゼロ革命や、と唸ったものだった。  それから僕とストロングセロの付き合いは始まった。思えば、それからの僕の人生はストロングゼロと共にあったように思う。
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突如、送られてきた1000本のストロングゼロ
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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