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ゲーム実況は善か悪か?メーカーに隠れて“三店方式”で収益化を図る配信者も

動画時代の新たな娯楽となったゲーム実況

 一般人だけでなく、VTuber、お笑い芸人、タレント、元スポーツ選手などが次々と参入し、今やすっかりエンタメのひとつとして定着したゲーム実況。  私の話になりますが、PS1時代の1999年頃に普通の中学生にファミコンのゲームを遊んでもらい、ゲーム中の感想やリアクションを文字に起こすという企画を自分のサイトで展開していました。テキストベースながら言ってみればゲーム実況の走りのようなもので、これが好評を得て、後にゲーム誌の連載にもなりました。  ただ、連載の企画が通るまでは「ゲームはあくまで自分がやるもの、他人がゲームをしているのを見て面白いわけがない」「攻略情報や裏技ならともかく、単なるプレイの様子をそのまま伝える意味がわからない」とさんざん言われました。それを思い出すと隔世の感がありますね。  少し脱線しましたが、このゲーム実況、現状は各メーカーがガイドラインを出し、それを守ることでライブ配信やプレイ動画を公開することが認められています。メーカーによって基準はさまざま。任天堂は2018年11月に、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を発表し、個人の動画実況の収益化について、指定のシステムを使う限り「著作権侵害を主張いたしません」と表明しています。
任天堂 ゲーム実況

任天堂の「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」のページ

 また、タイトルごとにガイドラインが引かれるケースも多く、アトラスの『真・女神転生V』(2021年発売)では「配信禁止区間」が設けられ、エンディングは配信禁止。イベントシーンなどを配信する際には「ネタバレあり」などの表記が必要となっていました。

投げ銭での収益に対してメーカーは?

 ストーリー上のネタバレや、主題歌など他の著作物がゲームに使われている場合での注意事項が大半ですが、今年2月25日に発売された世界的な大作『エルデンリング』に合わせて改訂されたフロム・ソフトウェアのガイドラインには、「スーパーチャット(スパチャ)」に代表される投げ銭についての言及が明確にありました。
フロム・ソフトウェア

フロム・ソフトウェアの公式サイトに掲載されたガイドライン

「投げ銭やスーパーチャットなど、視聴者から直接金銭の授受を行う機能を利用した収益化や、メンバーシップなど有料会員登録者限定の動画投稿に使用することは原則として禁止させていただきます」(※3月15日に動画に対する投げ銭機能「スーパーサンクス」も「金銭を送らないよう注意喚起をするようお願いいたします」と追記)  フロム・ソフトウェアのゲームに関し、実況動画の広告収入は認められるものの、視聴者が直接投げ銭をするいわゆる「スパチャ」は禁止。現在、大手VTuberや人気ゲーム実況者ともなるとライブ配信でのスパチャはかなりの額となります。1万円単位のスパチャが乱舞し、特別なイベントでなくても1日で軽く総額100万円を超えることも。  このスパチャを禁止された一部のゲーム実況者が編み出したのが、俗に「三店方式」と揶揄される手法。ゲーム実況ライブではスパチャ機能をオフにし、直後にゲームをしない別の枠を開いてそこでスパチャをもらうというもの。  パチンコ店を出たあとに別の店で換金する方式とイメージがかぶるためか、「三店方式」と呼ばれます。この集金方法に対して、モラルの問題を指摘する声や、「こうしたことを続けているとゲーム実況自体が禁止されてしまう」といった心配の声が上がっていました。
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ゲーム実況で顕在化する歪みとは?
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ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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