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「俺は警視総監の友達だぞ」現役Gメンが振り返る“万引き犯の苦しい言い訳”

 万引きGメンと呼ばれる職業は広く知られている。Gメンとは本来、アメリカ合衆国における特別捜査官であり、“Government”(=政府)の頭文字を冠する。日本で活躍する万引きGメンの多くは警備会社に所属し、私人逮捕の一翼を担う。  金銭を払わずに商品を持ち出そうとする不届き者たちとの攻防は、意外と人間臭い。彼らの話に耳を傾けると、招かれざる客たちの姿が見えてくる。
万引き

画像はイメージです

ベテランGメンが振り返る万引きの実態

「万引きという行為自体が理不尽ですが、万引き犯は捕まった後の言い訳も理不尽な人が多いですよね」  そう話すのは、都内で万引きGメンとして活動する小林英雄氏(仮名・40代)だ。この道10年目のベテランで、窃盗を見抜く目が高く評価され、さまざまな小売店から指名されるほどの腕を誇る。 「案外いるのは、高齢の男性で『確かに俺は商品にポケットに入れて店を出た。でも、万引きはしていない!』と言い張る人ですね。初めのうちは『どこが違うんだ』と問答していたんですが、速やかに警察に引き渡すことにしました。悪いことをしているのに、屁理屈をこねて押し通そうとする人は意外と多いですよ」

「警視総監の友達」が万引き?

 権威を笠に着れば、犯罪も見逃されると思っている壊滅的な人間もいる。 「もっとも意味がわからなかったのは、くたびれた洋服を着ていた初老男性です。おにぎりとか、食料品を数個盗んでいるのが見えました。裏に連れていくと、『俺が誰だかわかっているのか?』と言うんです。  いつも通り警察官を呼ぶと、大声で『いいのか? 俺は警視総監の友達だぞ?』と。すかさず『じゃあ警視総監の名前をどうぞ』と応答する警察官に、顔を真っ赤にして『知らねぇよ!』ですって。仕事中ですから堪えましたが、もう少しで笑うところでした。仮に友人なのだとしたら、きちんと法を遵守してほしいですね……」  思わずにやりとしてしまうエピソードだが、当然、シリアスな場面の方が多い。
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危害を加えてくるのは「100人に1人くらい」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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