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バスケ日本代表“ベネズエラ戦の救世主”は何者か。最終戦でもキーマンに

 バスケットボールワールドカップに参戦している日本は1次リーグを突破できなかったが、パリオリンピック出場権が懸かった順位決定戦に回っている。残る2試合に連勝すれば自力でオリンピック出場権を得られるが、逆に言えば1敗もできない状況で8月31日にベネズエラとの戦いに挑んだ。  ここまでオフェンスを引っ張ってきたジョシュ・ホーキンソンだが、この日は放ったシュート7本をすべて外す絶不調で、日本は最大15点の点差をつけられる大苦戦の展開となった。この苦境から日本を救ったのが比江島慎だった。
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23得点を挙げた比江島慎は逆転劇の立役者となった ©FIBA.com

比江島慎の活躍なしにはあり得ない逆転劇

 比江島は序盤から好調ぶりを発揮し、渡邊雄太とともにオフェンスを引っ張っていた。しかし、後半開始3分で4回目のファウルを取られてベンチに下がっていた(個人のファウルが5回で当該選手は退場)。リードを許したまま第4クォーターを迎えたが、日本はベネズエラを相手に反撃のきっかけをつかめない状況で、トム・ホーバスHCは比江島のオフェンス能力に頼らざるを得なかった。  比江島は追い込まれれば追い込まれるほど集中力を研ぎ澄まし、勝負どころで大仕事をやってのける「クラッチプレーヤー」であり、この大事な一戦でその本領を発揮した。13点差の状況から3ポイントシュートを連発で決めて試合の流れが日本に傾くと、劣勢の第3クォーターには静まっていた観客席も大いに沸き始め、ベネズエラはそこまで飛ばした反動もあって防戦一方となった。  残り2分、スティールから速攻に転じた馬場雄大のアシストを受けた比江島のレイアップシュートで、ついに日本が逆転に成功。日本の勢いはもう止まらず、そのまま86-77と突き放して劇的な勝利を収めた。チームトップの23得点、比江島の活躍なしにはあり得ない逆転劇だった。

比江島のこれまでのキャリアは…

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ベネズエラ戦後、渡邊雄太は勝利に導いた比江島慎を大絶賛した ©FIBA.com

 比江島はチーム最年長の33歳で、バスケ王国の福岡県古賀市出身。幼少期から同世代のライバルとレベルの高い争いを繰り広げるなかで、そのセンスを磨いた。高校は九州の強豪校ではなく京都の洛南を選択。2つ上の学年には湊谷安玲久司朱、1つ上には辻直人と優れた先輩はいたが、比江島は1年からレギュラーとして活躍し、高校バスケ日本一を決めるウインターカップを3年連続で制している。  青山学院大を経て加入したアイシンシーホースは、シーホース三河と名前を変えてBリーグの時代を迎える。比江島は高校から大学、実業団からプロへとステージを変えながら、常にエースとして非凡なバスケセンスを見せてきた。  その彼にとって高い壁となって立ちはだかったのが、バスケの本場であるアメリカでのプレーだ。
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挫折から成長し続けて自国開催の大舞台で本領を発揮
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フリーランスのスポーツコンテンツエディター。Bリーグ創設の2016年に立ち上がった日本最大級のバスケットボール専門メディアの専属ライターおよび編集者として取材を行い、Bリーグ、Wリーグ、日本代表、高校バスケや大学バスケなど幅広くバスケットボールを取材。今もバスケを中心に多くのスポーツコンテンツ制作を手掛ける
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