更新日:2024年11月20日 11:10
エンタメ

「心が折れる」という言葉を作ったのは神取忍だった。発言の背景には「怪我をさせたらダメ」という前提が

どんな物事にも始まりがある。そしてそこには、想像がつかない状況や苦労も。商品やサービスだけでなく、「言葉」にも始まりの瞬間はある。例えば「心が折れる」。今では当たり前に使われる言い回しだが、現在の意味で初めて使ったのは、女子プロレスラーで元参議院議員の神取忍氏だ。誕生にはどんな裏側があり、流行をどう見ていたのか。そして、生みの親が語る「心が折れない秘訣」とは?
神取忍

神取忍氏 ©産経新聞

「心が折れる」発言を振り返る

話は1987年までさかのぼる。格上であり因縁もあった相手ジャッキー佐藤に勝利を収めた後、ノンフィクション作家の井田真木子氏が行ったインタビュー内で、神取氏は「あの試合のとき、考えていたことは勝つことじゃないもん。相手の心を折ることだったもん」と述べている。 それまで「心変わりする」に近い意味で使われることが多かった「心が折れる」という言葉。だが、この時の神取氏の発言が、現在使われている「心の拠り所を失う」といった意味で始めて使われたとされる。 肉体をぶつけ合う競技であるプロレスにおいて、なぜ心を狙っていたのか。 「プロレスラーの大前提として相手に致命的な怪我をさせたらダメでしょ。そのなかでどうやって相手に勝つかとなると『心』を狙うことになるよね」

柔道で「心技体」を学んだ

格闘技における心の重要性を、身に染みて理解していたことに由来するのかもしれない。 「私は柔道からプロレスに来たんだけど、日本の武道では『心技体』と言われるよね。どんなに技が豊富で体が強くても、心が強くないといけない。それを柔道を通して学んで来たの。例えば、同じくらいのレベルの選手との対戦でも、心が弱いと負けてしまったり、逆に心を強く持てたときに勝つことができたという経験がたくさんあったからね」 では、心を「砕く」でも「壊す」でもなく「折る」と捉えたのには、どんな理由があるのか。 「格闘技をやっている人間の感覚的なものじゃないかな。『砕く』や『壊す』より『折る』のほうが『一本!』という感覚」
次のページ
なぜ10数年経ってから流行したのか
1
2
3
4
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

記事一覧へ
神取忍還暦記念イベント 「神取忍還暦祭り~人生もう1度、これからも真向勝負」(2024年11月18日開催)
おすすめ記事
ハッシュタグ