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「中国に朝貢せよ」でプチ炎上した外山恒一。その真意は「ほめ殺し」だった!?【1万字インタビュー】

 9月中旬、自称ファシストの外山恒一氏が「日本は中国に朝貢せよ」と訴えるインタビューを掲載したところ、案の定、彼に対する非難や罵声がネット上で飛び交う事態に。果たして彼の主張は本気なのか? 確かめるために再度のインタビューを試みた。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1209776 ――先日の「日刊SPA!」でのインタビュー記事の反応、最悪でした。 外山:えっ、そうなんですか? いいことしか言ってないのに、おかしいなあ。 ――ウチの記事は他のニュースサイトにも転載されるんですが、Yahoo!ニュースではコメントが1500件以上ついてて、大半というか99%は批判、非難、罵倒という感じです。 外山:ネットでの炎上とかって、調べてみたらほんの数人のネトウヨみたいなのが工作してただけだった、って話もよく聞くじゃないですか。1人で1500件コメントつけた奴がいるんじゃないですか? ――いやいや、それはないでしょう。「国賊め」「日本から出て行け」……そういうコメントばっかりです。 外山:記事の地の文でも「売国奴め!」ってツッコミを入れてたわけだし、編集部的にはいわゆる“炎上商法”ってやつで、「してやったり」じゃないんですか? ――滅相もない。せっかく企画に登場いただいた外山さんの評判をますます落とすような結果になってしまいました。 外山:“ますます”? ――そこで改めて外山さんに発言の真意をおうかがいして、もっと火に油を……いや火を消すことに努めたい、と。 外山:編集部の“真意”はともかくとして、私は訊かれれば何でも答えますよ。 ――ありがとうございます。ではさっそく。まず問題のインタビュー記事での発言は、外山さんとしてはべつに奇をてらっているのでも何でもなく、本気のものなんですよね? 外山:もちろんです。私は選挙にも民主主義にも反対しているファシストですし、反米主義者で中華主義者です。 ――一番反発を受けたのは、“反選挙”や“反民主主義”ではなく、“反米”でも“ファシズム”ですらもなく、“中華主義”の部分だと思われます。 外山:そうでしょうね。みんな中国が嫌いですもんね。 ――外山さんは「アメリカと手を切って中国の側につけ」と言っています。それも「朝貢しろ」と、日本が中国の“下”につく形でそうしろと言っているように受け取れるんですが……。 外山:今だってアメリカに朝貢しているようなもんじゃないですか。どうせ朝貢するんなら、にっくき欧米列強の鬼畜米英なんかにではなく、大東亜共栄圏の同胞である中国に朝貢する方がずっといいでしょう。 ――でも中国は正直やっぱり怖いですよ。とくに近年、“大国”として力をつけてきてからは、台湾やフィリピンを軍事的に挑発したり、ウイグルやチベットでやっていることも酷いですし、自国民に対してさえ言論の自由を認めないし、とうてい仲良くできるとも思えません。 外山:気持ちは分かります。しかし、まず第一に、私が「日本はアメリカにではなく中国につけ」と言っているのは、好き嫌い以前に、他に日本が生き延びる道がないからです。問題のインタビューでも言ったとおり、アメリカはもう日本を見捨てる気マンマンです。というより、“対テロ戦争”も泥沼化する一方だし、もう世界の問題からは手を引いてしまいたいという衝動を日に日に強めています。“トランプ旋風”にもそれは表れているでしょう。そもそもアメリカは第一次大戦まで、実質的には第二次大戦まで、国外の問題には首を突っ込まないことを国是としていた国で、むしろ“保守派”の側にこそ“引きこもり願望”が脈々とあるんです。しかも中国が急速にノしてきて、アメリカに対抗しようとしているし、それを完全に抑え込めるとはアメリカももう考えてませんよ。 ――だからといって、仮に例えば尖閣問題がもっとこじれて、中国が日本を武力で攻撃してきたとして、アメリカがそれを黙って見ているでしょうか? 外山:本音としては関わりたくないはずです。しかし同盟国である日本を見捨てたら、他の同盟国もアメリカを信用してくれなくなりますから、仕方なく介入してくるでしょうね。 ――ですよね? 外山:今のところは、です。しかし仮に中国が“問題のすりかえ”に成功すればどうでしょうか? ――どういう意味ですか? 外山:尖閣諸島がどうこうという“領土問題”で揉めているのではないんだ、日に日に右傾化し、過去の侵略戦争を美化し、戦前の体制の復活をもくろむ自民党支配の日本に“懲罰”を加えなければいけないんだ、というふうにです。念のために言っておきますが、私は、日本が右傾化しているとも、過去の日本の戦争がすべて間違っていたとも思いませんよ。あくまでも、中国がそんなふうに“問題のすりかえ”をおこなうことは可能だという話で、もしその方向で中国が国際世論を説得することに成功してしまえば、アメリカには日中の紛争への介入をサボる口実ができますし、アメリカとしてもそっちのほうが助かるんです。 ――そんなの無茶苦茶じゃないですか? 外山:いや、“日本は過去に酷い侵略戦争をやった旧敵国だ”という認識に関しては、どちらも戦勝国である中国とアメリカの間にまったく齟齬はないんですからね。もちろんそういった国際世論形成の成否とは無関係に、アメリカにはすでに中国を完全には抑える力がないことは明らかで、中国が絡んだ場合には介入したくてもできない、という状況にアメリカはますます追い込まれていくでしょう。太平洋の真ん中あたりに勢力圏の分割線を引いて、「ハワイにまでは手を出すなよ。それより向こうはもう中国で好きにやってくれ」などとアメリカは言い出しかねません。周辺諸国に対する最近の中国の振る舞いを見ていれば、アメリカが口出ししてこないという確信さえ得られたら、日本に対しても平気で武力行使でも何でもやってくるでしょう。今は中国にまだその確信がないだけですよ。 ――怖い話です。考えたくもないですが、中国と戦争になったら日本はやっぱり勝てないんでしょうか? 外山:勝てるわけありません。核武装したって勝てませんよ。理由は簡単で、中国は自国民の命を大事にしないからです。日本が核武装して、アメリカにそれを向ければ、アメリカはもう日本に無茶な要求をできなくなるでしょう。アメリカは自国民の命は大事にするからです。しかし中国に向けたところで、向こうは「やれるもんならやってみろ」ですよ。実際かつて冷戦時代の真っ最中に、アメリカに対してそう言ってのけたような国ですよ、「こっちは何億人いると思ってんだ」って。 ――しかし、いくら中国でも、それこそ国際世論の手前もありますし、そう簡単に核攻撃なんかできないでしょう? 外山:もちろんです。仮に尖閣問題その他がこじれて、偶発的であれ何であれ武力衝突が起きてしまって、原因は向こうの作戦かこっちの無能か、日中戦争の時にそうであったようにズルズルと戦線を拡大させて、ついには全面戦争に発展したとしましょう。私も日本の自衛隊がそんなに弱いはずはないと思ってますし、通常兵器で争ってるうちは、もしかしたら勝てるかもしれません。そしておっしゃるとおり、だからといって中国も核攻撃にはなかなか踏み出せないでしょう。しかし、私がもし中国の指導者であれば、万が一負けそうになった時には、ウイグル人の兵士に命じて非公然の決死隊として日本に上陸させ、原発を破壊した上で全員その場で自決させますね。そして、「やったのは我々ではない。イスラム原理主義者によるテロだ。卑劣なテロを断乎として糾弾し、交戦中の敵国のこととはいえ、日本の犠牲者に哀悼の意を表する」とかなんとか声明を出します。それで2、3基やられたら日本はもうお手上げでしょう? 逆に日本が中国に対して同じことをやり返したって、向こうは平気ですよ。 ――怖いシミュレーションがお好きですね。 外山:常に最悪の想定を考えておかないとダメなんです。威勢のいいことばかり言ってれば日本の独立が守れるんなら世話ありません。 ――逆にそこを批判してる人も、もちろんごく少数ですが、いました。「日本の独立」を云々するようになるとは、外山恒一も堕ちたもんだな、的な。 外山:そんな“批判”をしてくるのは、ネトウヨとどっちもどっちのヘサヨでしょう。私もかつては国家とか民族とかどーでもいいというアナキストでしたが、2003年に獄中でファシズム転向した時点で、ナショナリズムには肯定的な立場をとるようになっています。私自身はファシストであって、ファシストというのは日本人でも人類ですらもなくただただファシスト党という結社の一員であるというアイデンティティを持っていますから、私は愛国者ではありませんが、愛国者の皆さんと根本的に対立するような主張はしていないはずです。世界情勢の都合の悪い展開は直視せず、自分は愛国者であるというアイデンティティさえ守っていれば日本の独立も守れると思い込んでいるようなマヌケな連中を、私は愛国者だとは思っていませんから、1500人のニセ愛国者に非難されようが何とも思いません。とにかくアメリカが日本をついに見捨てる日はそう遠くない将来に必ずやってきます。その“運命の日”を、今と同じように中国を敵国としたままで迎えてしまえば、それこそ日本は中国に侵略されて、滅びるでしょう。
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外山氏は中国を“褒め殺し”ている?
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ポップにして真摯、大胆にして正統的、ライブ感あふれる、「役に立つ日本史」


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