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中国が台湾に本気のサイバー攻撃を仕掛けないわけとは?

緊張感高まる台中関係だが……

 台湾で緊張が高まってしばらく経つが、中国は本気のサイバー攻撃を仕掛けていない。サイバー攻撃そのものはしているが、それはいわゆる閾値以下の攻撃ばかりだ。閾値以下の攻撃とは超えてはならない一線=レッドラインを超えないという意味だ。レッドラインを超えたら、いつ戦争になってもおかしくないということになる。  平時には閾値以下のサイバー攻撃はもはや「当たり前」となっているのが現代の国際関係だが、報道は平時とは言えない状況だと伝えている。実際、今回中国が行った軍事演習などは過去のレッドラインを超えているが、アメリカはレッドラインを超えた反応はしていない。アメリカはペロシの訪台が失策であったことを知っており、問題をエスカレーションさせたくないようだ。中国がアメリカの隙につけこんだ形だ。  中国にとってもアメリカにとっても今は戦争するタイミングではなかったこともあり、ペロシの訪台という失策をきっかけに中国はレッドラインの押し上げには成功した。ただ、本気で戦争するつもりがない以上、本格的なサイバー攻撃までする必要はない。

中国が台湾に仕掛けていたサイバー世論操作

 香港の例に考えてみると、中国は言論統制などを行う前から経済界への影響力を高め、内部からの切り崩し工作も並行して行っていた。  この「工作」は、2段階に分かれており、フェーズ1で経済界への影響力を高め、フェーズ2で経済界から従業員、取引先などに広めて行く(参照:「Newsweek日本版」)。キャセイパシフィック航空が抗議デモに参加した従業員を解雇したことを覚えている方もいるだろう。経済界を動かし、メディアに影響を与え、世論をネット世論操作で変容させていく。  香港と全く同じやり方をするとは限らないが、その手順を参考に考えてみる。中国は台湾の輸出の三分一近くを占めており、近年では台湾企業が本土に投資を行う話も出ている。フェーズ1の段階なのだ。そのため、ここで産業界に甚大な被害を与える本格的なサイバー攻撃を行うのは得策ではない。台湾に対して経済制裁めいたこともしているが、きわめて限定的であり、長くは続けないだろう。いま必要なのは被害を与えることを目的とした破壊的なサイバー攻撃ではなく、気づかれにくく正体を隠しやすい情報収集のための閾値以下のサイバー攻撃なのだ。
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より「見えなく」なっているサイバー攻撃
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ウクライナ侵攻と情報戦

海外研究機関の各種報告から読み解く、現代の情報戦最前線と民主主義の危機とは?



【お知らせ】 2022年9月20日に明治大学で「我が国で高まるサイバー脅威、インフルエンスオペレーション」というサイバーセキュリティ研究所主宰のウェビナーが開催されます(50名限定・参加費無料)。サイバー空間での世論操作、偽情報作戦、ネット世論操作、デジタル影響工作と呼ばれるものがテーマとなっています。 筆者・一田和樹氏のほかに、海上自衛隊でサイバー関連業務に従事し、在ロシア防衛駐在官、防衛省情報本部分析部課長、統合幕僚監部サイバー企画調整官などを歴任し、現在ベストセラーとなっている『ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛』(ワニブックスPLUS)の共著死者でもある佐々木孝博氏が、知見を披露してくれます。
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