「廃炉より原発維持のほうが高コスト」ドイツ関係者が断言

 ドイツでは、建設中に計画が中止されたものを含め、40基の原発がある。そのうち廃炉作業中の原発は22基、廃炉作業が完了したものは1基だ。本誌記者が向かったのは、ベルリンから北西へ100kmほどの場所にあるラインスベルク原発。同原発は、’66年に運転を開始したドイツ最古の原発だ。VVER210ロシア型加圧水式原子炉(44万kW)が一基という小型の原発で、’90年に停止した。

原発解体作業

解体作業の様子。核燃料を輸送用キャスクに収納し、中間貯蔵施設に輸送する

 取材に訪れた本誌記者を出迎えたのは、エナジー・ヴェルケ・ノルド社(EWN)の広報担当のヨルク・メーラー氏。EWN社は、原発の廃炉を目的に各分野の技術者をヘッドハンティングして作られた会社。ラインスベルグ原発のほか、ドイツや欧州の老朽原発解体を請け負っているという。わざわざ新たに会社が作られたのは「解体作業は誰にとっても未知の分野」(メーラー氏)で、どの会社も充分なノウハウがなかったからだという。

「優秀な技術者をヘッドハンティングして、技術開発を進めました。例えば、いかに作業員の被曝を軽減するかは重要です。そのためロボットアームなど遠隔捜査が可能な機器を開発しました」

 メーラー氏は、放射能に汚染された原発の廃炉は長い年月と手間が必要だという。

「廃炉直後は放射線量が高すぎるので5年間寝かせて、’95年から解体事業を開始しました。最初は、敷地内のボイラー室の部品など放射能汚染の少ない部分からはじめ、徐々に原子炉周辺の汚染の高い部分へと解体していきます。作業終了には70年ほどの時間がかかるのです。原発の廃炉には、専門的な技術や経験も必要。そのため、原発を運転していた頃の労働者の多くが、廃炉作業に関わってくれています」(メイラー氏)

 もともと原発を運転/管理する民間企業だったEWN社は’00年に国有化。20年以上にわたって続けてきた原発廃炉のノウハウは、世界的な脱原発の流れのなかで新たなビジネスとなり、ドイツだけでなく欧州各国での原発廃炉を請け負うようになった。最近では、ロシアの原子力潜水艦の解体事業も受注しているという。

 廃炉には莫大な費用がかかる。「ラインスベルク原発の場合、解体コストは6億ユーロ(約660億円)。これは同原発の発電事業(’66~’90年)で得た利益を超える額です」(メーラー氏)。だが、それでも廃炉作業が行われているのは「安全基準を満たし原発を維持する方が、さらに費用がかさんだから」と取材に同行したセバスチャン・プフルークバイル氏(元・東ドイツ暫定政権評議員)は語る。

「独裁政権下にあった東ドイツの原発は、非常にずさんな管理にあり、いつ重大事故を起こしてもおかしくない状況にありました。’90年の東西ドイツ統合後、ドイツの大企業シーメンス社がラインスベルクなど11基の旧東ドイツの原発の管理の引き継ぎを検討しましたが、安全基準を満たすには採算が合わず、断念せざるをえませんでした」(同氏)。

 福島第一原発事故後、シーメンス社は原発関連事業自体から撤退した。その理由は「原発は、初期投資が巨額で、建設から運転まで10年以上かかる。安全性の要求がますます高まり、一層のコスト高。仮に事故を起こさなくても、放射性廃棄物の処分に困る。それならば、他の分野で収益を上げた方が合理的」というもの。同社は近年、ガスや風力発電などのエネルギー事業に力を注いでいる。

 1/22発売の週刊SPA!『結論「原発は廃炉」が経済的に正しかった!』では、福島第一原発事故後に脱原発の方針を確認したドイツの廃炉現場をリポート、原発のトータルコストを検証している。<文/週刊SPA!編集部>

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