【被災地に付け入るニセ科学の問題点】サイエンスライター片瀬久美子氏

◆ニセ科学が蔓延する放射能除去の今

片瀬久美子氏

片瀬久美子氏

 ひまわり、創世水、ホメオパシー、バクテリアなどの微生物……放射性物質に怯える人の不安に付け込み、暗躍した真偽不明な除染方法は数えきれない。そして、今もなお、ナノ純銀粒子といった新手の除染方法を提唱する者が現れ、人々を惑わしているのが実情だ。

 そんななか、「EM(有用性微生物群)の使用者は減るどころか、特に被災地で増えている」と語るのは、ニセ科学に詳しいサイエンスライターの片瀬久美子氏だ。

「福島県のEM活用団体数は、震災前に比べ、約2倍増と突出しています。彼らは、福島県農林水産部が行った実証実験の結果を基に、“EMで作った堆肥を使用すれば、土壌内の放射性物質が農作物へと移行することを防ぐ効果がある”“EMが放射性物資の放射能を消去する”と喧伝しています。しかし、このデータを検証すると、作物への放射性セシウムの移行防止効果はEM堆肥に含まれる交換性カリウムによるもので、EMの特殊効果によるものではないことが考えられます」

 EMの効果には早くから疑問符がついていたが、業者は清涼飲料水やセラミック、洗剤の代わりなどさまざまな関連商品を開発。今では、業者の巧みな宣伝や口コミなどで、福島県民を中心に広まっているという。

「不安に駆られた状態の人は、普段だったら実践しない一見バカげたことでも“効果がある”と言われると、それに懸けてしまいたくなるもの。以前、口蹄疫が発生した際には“EMが結界を作ることで家畜を守る”などという荒唐無稽な主張を信じた人がいたほど。福島県民の藁にもすがる思いに付け入っているわけです」

 ニセ科学を否定するのは簡単だ。しかし、いったん拡散したニセ科学にストップをかけるのは、放射能の除染以上に難しいのだ。

【片瀬久美子氏】
ニセ科学などに詳しいサイエンスライター。理学博士。専門は細胞分子生物学。共著に『もうダマされないための「科学」講義』(光文社新書)がある

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