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中国で防犯グッズが大流行!殺人スタンガンから軍用催涙ガスまで

中国,治安 中国で今、ひそかに成長を続ける市場がある。監視カメラから催涙スプレー、スタンガンなど防犯機器産業である。 『解放日報』(’13年12月15日付)によると、中国全土に設置されている防犯カメラの数が2000万台に達し、世界一になったという。さらに防犯情報サイト『安防展覧網』によると、家庭向け防犯産業の市場規模は年平均1~2割のペースで拡大しており、’12年時点で350億円を突破した。  広州市の日系メーカー勤務・大倉翔平さん(仮名・39歳)も、防犯器具の普及についてこう話す。 「電気街では、防犯グッズ売り場がビルのワンフロアを占めるほど品揃えが豊富です。無線LAN経由で遠隔操作でき、非常時に100デシベルの警報音を鳴らすラジコン戦車や、空き巣がピッキングしようとすると高圧電流が流れるドアノブなど、ユニークな商品も多いです」  また中国では、治安の悪さを反映してか、非殺傷武器の携行も一般的になりつつある。広州市の日系工場に勤務する長田幸弘さん(仮名・33歳)の目撃談はこうだ。 「路線バスの車内で突然、運転手とトラブルになった男が暴れだしたことがあったのですが、乗客の一人が持っていたスタンガンで撃退したんです。さらに驚いたことに、彼のほかにも3人の乗客がスタンガンを手にしていました。みんなここぞとばかりにスタンガンを使いたかったんでしょうね(笑)。中小企業の中国人社長など、知り合いにも最近、小型で高性能なスタンガンを持っている人が多い」  中国在住・フリーライターの吉井透氏は、防犯機器産業の普及の背景についてこう話す。 「中国の警察は、そもそも『人が死なないと動かない』ので、窃盗や強盗対策は、これまで警備会社やボディガードに頼っていた。しかし経済成長の鈍化とともに、治安が一層悪くなるなか、警備員が強盗団に買収されたり、寝返るケースが相次いでいるんです。結局、自分の身は自分で守るしかないというわけで、防犯器具の需要が高まっている。ただ、非殺傷武器に関しては防犯目的だけでなく、逆に犯罪に使われるという本末転倒なケースも出てきている。こうした状況に加え、法規制もないので、より強力なものが世に出回る結果になっている。殺傷能力のある危険なスタンガンも出回っていて、死亡事故も起きています」  防犯目的の催涙ガスでも、50m先までガスを噴射できる、軍が治安対策で使用するような強力なものも出回っており、こちらも失明や後遺症が起きて、社会問題になっている。  上海在住の旅行会社勤務、向井典明さん(仮名・39歳)も、防犯機器が悪用される場面を目撃した。 「武器を持った複数の男たちが、二手に分かれて争っていたのですが、双方にスタンガンを持った男がいて両者にらみ合いになった。しかし、一方のスタンガンは電極部が弾丸のように飛ぶ仕組みになっており、相手方に見事命中。電気ショックを受けた男は倒れて泡を噴いていました。集落同士の武器を使用した集団の喧嘩『械闘』は中国の伝統ですが、最近はハイテク化しているようです」  防犯器具の普及で、ますます治安が悪くなるとは皮肉な結果だ。 <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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