“人種差別問題”後、浦和レッズサポーターはどう変わったか?

問題の幕

とくに熱狂的なファンの集まる「209」ゲートに掲出された問題の幕はTwitterを通じて瞬く間に拡散した

「あの事件でこの20年で積み重ねてきたものが壊れてしまった」と嘆くのはJリーグ屈指の熱狂的な応援で知られる浦和レッズサポーターのA氏。地元出身でJリーグ発足から応援を続けている40代男性の古参サポーターだ。あの事件とは言うまでもなく、「JAPANESE ONLY」の横断幕を北ゴール裏と呼ばれる最も熱狂的なサポーターが集まるエリアに貼ったことに端を発した“人種差別問題”である。

 レッズに対してJリーグは管理責任を問い、ホーム主催ゲームの無観客試合(観客からのチケット代、スタジアムでの飲食やグッズ販売などによる収入が入らず、クラブは多大な損害を被った)という厳罰を下した。また事件発生を受けてクラブは幕や旗などアジアNo.1とも言われるレッズの応援スタイルに欠かせなかったアイテムのスタジアム持ち込みを禁止(現在、旗はクラブのオフィシャルグッズのみ持ち込み可能)するなど、再発防止を徹底する動きに出ている。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=649197

 前出のA氏は言う。「応援メッセージだったり、お気に入りの選手の似顔絵だったり、差別とは無関係だったものがほとんどだったのに、それがあの幕1枚で全部禁止にされてしまったのは、本当に残念。僕は指定席で見ているから、北(北ゴール裏)がよく見えるんだけど、どうしてもビジュアル部分で迫力に欠ける感じがしてしまうね」。

 レッズの応援スタイルが“修正”を余儀なくされたのは、ビジュアル部分だけではない。

 同世代の小野伸二が好きでレッズファンになり、以来北ゴール裏で応援を続けている30代男性、B氏はこう嘆く。

「いちばん痛かったのはゴール裏のチーム(熱狂的なサポーターグループ)が解散したことだね。コール(応援の発声)や太鼓で彼らがリードすることであの一体感ある応援が出来ていたから。今は思い思いにチャント(応援歌)を歌ってそれがゴール裏全体に広がっていくような感じだけど、太鼓がないから合わせづらいし、チャントの種類もリードする人間がいないから、バラバラだったりすることもあるし」。

 事件発生を受けて、北ゴール裏に複数あったチームは話し合いを持ち、結果として全チームの自主解散を決めたという。複数あるチームのうちのひとつのメンバーが差別幕を掲出した当事者だったことがその理由だ。

「問題を起こしたチームが解散するのは分かるけれど、北の全てのチームが解散したと聞いて驚きました。熱狂的な人が多いから、ちょっとおっかなくて、近寄りがたかったりもしたけど、浦和の応援スタイルを先頭に立って作ってきたのは間違いなく彼ら。彼らは個人としてはスタジアムに来ているみたいだけど、やはりチームでリードをしてくれないと以前のような迫力ある応援はできないと思う」(B氏)

 一方で今回の一連の動きを好機だと捉えているファンもいる。

 B氏と同じく北ゴール裏で観戦するレッズファン歴10年、30代女性C氏は言う。

「チームが今まで応援を引っ張ってくれたことは認めますけど、中には汚い野次を飛ばしたり、応援に気合が入っていないと一般のサポーターを怒鳴り散らしたり、禁煙なのにタバコを平気で吸うような人までいました。特別な存在になっていて、みんな注意したくてもなかなか言えなかった。そういうことの積み重ねで今回のような事件を起きたんじゃないですか。今回の事件は悲しいけど、各チームが解散したのはいい機会。これからは特定の団体が主導権を握るんじゃなくて、ひとりひとりが思い思いに声を出していく。そういう所からやり直して、新しい応援スタイルを作っていけばいいと思います」

 2006年のリーグ制覇、翌年のACL(アジアチャンピオンズリーグ)制覇、クラブワールドカップではアジア王者としてヨーロッパ王者のACミラン(イタリア)相手に接戦を演じ、世界3位に輝いたのを最後に、近年は低迷が続いたレッズだが、今季はJリーグでは首位をキープするなど好調で久々のタイトル獲得も期待されている。

セレッソ戦

久しぶりに5万4千人を超える観衆で埋まった浦和レッズ×セレッソ大阪戦。Jリーグの試合で5万人以上の動員があることは年間を通しても稀で、あらためてレッズのクラブとしてのポテンシャルが感じられた

 全盛期には毎試合、5万人の観衆を集めるなど、人気実力ともに文字通りのビッグクラブとして君臨してきたが、観客動員もチームの成績と共に下降線をたどり、本拠地・埼玉スタジアムが満員になることもここ数年稀。それがワールドカップによる中断期間前、最後のリーグ戦となった先日のセレッソ大阪では久々に満員の観衆が詰めかけた。

「空席の多いスタジアムを見慣れてしまっていたから、久しぶりの5万人越えは嬉しかったね。代表選手目当てのセレ女(セレッソファンの女性)は確かに多かったけど、スタジアムのほとんどは赤く染まった。チームの調子はいいし、また昔みたいに毎試合、満員のスタジアムでいい雰囲気を作って選手の背中を押してやりたい。そうすれば、きっと優勝できると思うよ。こういう事件を起こしてしまった年だからこそ、浦和レッズの持っている素晴らしい部分を成績でも応援でもアピールしていかないといけない」とセレッソ戦後、前出のA氏は顔を紅潮させながら話してくれた。

 レッズサポーターが熱狂的な応援スタイルで日本のサッカー文化を牽引してきたことは紛れもない事実。しかしその熱心さが時に仇となり、不祥事を起こしてはニュースの話題となることも少なくなかった。ワールドカップ後、その熱気冷めやらぬ中、レッズサポーターはどのような振る舞いを見せるだろうか。転換期を迎えた彼らの動向を見守りたい。

<写真提供/レッズサポーターの皆さん 取材・文/日刊SPA!編集部>

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