ダル、甲子園の超スローボール投手をリリーフ
MLBテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有が、甲子園で話題となった東海大四・西嶋亮太投手の投じた超スローボールについて、ツイッターで持論を“投下”した。
『スローボールかスロカーブが投球術ではないという話があると聞きました。自分としては一番難しい球だと思ってます。言ってる人はピッチャーやったことないんだろうなと思います^^;』(原文ママ)
ダルビッシュのこのツイートは、投下から2時間あまりで8,000近い数がリツイートされたので、ご存知の方も多いだろう。これは開催中の甲子園大会の4日目(8/14)、東海大四の西嶋亮太投手が投じた超スローボールを指している。
今夏の甲子園大会は、東海大系列の高校が4校も出場するなど注目を集めたが、1回戦を勝ち上がったのは東海大四のみ。スローボールを駆使した西嶋君は身長168cmと投手としては小柄ながら、プロ注目の好打者が並ぶ九州国際付属を相手に今大会最多の12奪三振を記録、見事1失点の完投勝利を挙げたのだった。
さて……ダルビッシュといえば、マウンドでのパフォーマンスのみならず、時折、日米双方の野球(文化)論を知る“論客”としてツイッター上で持論を展開するなど、その発言は注目が高い。ダルビッシュのツイッターは116万人ものフォロワーを数え、何気ない彼の発言は、これまで「努力、根性、気合い」が合言葉だった高校野球の思考を多様化させるために、大いに役に立っているように筆者は感じている。
◆オールスターでスローカーブを投げ話題に
そんなダルビッシュは、今年のオールスターゲームでスローカーブを2球も投じた。MLB公式サイトの日本語版「MLB.jp」では、ダルビッシュの投じたスローカーブを確認することができる。
●ダルビッシュが球宴初登板! 1回を完ぺきに抑える
(動画は1分48秒、スローカーブは00:50と01:13の2球)
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00994/v00125/v0000000000000013168/
●GIF画像
http://mlbfancave.mlb.com/fancave/blog/article.jsp?content=article&content_id=59110812
映像を見れば一目瞭然だが、ダルビッシュのスローカーブは非常によく曲がる。甲子園で話題となっている西嶋投手のスローボールとは異なる球種であることは明らかだが、両者がMLBのオールスター戦(ダルビッシュ)、夏の甲子園(西嶋投手)、という選ばれし者だけが立てる最高の舞台で投じた点は、共通項といえるだろう。
10数年も前の話で恐縮だが、筆者はMLBのクラブハウスで、バリー・ボンズとチームメイトの投手陣が、こんな会話を交わしていたのを覚えている。
投手A:「いつも思うけど、バリーが味方で本当よかったよ(笑)」
投手B:「バリーがホームランできないボールなんて、ないだろ?」
バリー:「おまえらは味方だから教えてやるよ。超スローボールさ(笑)」
投手C:「今日からブルペンでスローボールを練習するよ(笑)」
メジャー史上最多ホームランを記録したあのボンズでさえ、「ホームランを打つのはムリ」と断言した超スローボール。思えばダルビッシュが球宴で投じた相手はヤシエル・プイグ(ドジャース)、トロイ・トロウィツキー(ロッキース)と、どちらも強打者だ。
日米のプロ野球で審判員として活躍し、現在はNPB審判技術員として活動中の平林岳さんは「私がアメリカの審判学校で最初に学んだことは、ルールとマナーを守ろうという話。野球規則を守ってプレーするのはもちろん、あいさつとか、相手へのリスペクトとか、ルールには書いていないマナーも大事」と熱弁をふるう。
そういう意味で、西嶋投手がスローボールを投じた相手打者は、プロのスカウトが注目する選手だった点からも、「相手へのリスペクト」というメッセージが込められているように筆者は感じた。
山際淳司氏の不朽の名作「スローカーブを、もう一球」は、スローカーブを武器に快投を続ける主人公が、甲子園をかけた地区予選での快投を綴ったノンフィクションの物語だが、現代版スローボールの西嶋投手は甲子園で連勝となるだろうか?
西嶋投手率いる東海第四の2回戦は、19日第1試合の山形中央戦だ。
<取材・文/スポカルラボ>
http://www.facebook.com/SportsCultureLab
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