「腕の一本、二本は惜しくない」 “リアル刃牙”渋谷莉孔の世界挑戦に密着
不良の格闘技大会「THE OUTSIDER」で、ケンカ仕込みのファイトで“リアル刃牙”の異名をとる渋谷莉孔。3月13日、マレーシア・クアラルンプールのプルタスタジアムで開催されたアジア最大の総合格闘技イベント、OFC26「ONE Championship」にて、フライ級王者のアドリアーノ・モライシュとタイトルマッチを行った。
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◆「ONE: Age Of Championship」(2015年3月13日 プルタスタジアム/クワラルンプール)フライ級タイトルマッチ5分5R
ケージ(金網)の中にて相見える両者。ゴングと同時に得意の打撃でガンガン前に出て行く渋谷。右ハイ、飛び膝で一定の間合いを取りながら隙をうかがうモライシュだが、渋谷はさばきながら前に出て行く。バックからマウントを取られて、一瞬ヒヤッとする展開もあったが、脱出したところで1R終了。「ずっと恐れている相手だったのに、ゴングがなって相手がきてから最後まで、会場観客にも緊張すらしなかった」と試合後の本人談にもあるとおり、気後れした感じはなかった。
はっきりと優勢だったのが2R。打撃で詰め寄る渋谷に、モライシュがたまらずタックルに来たところに膝を入れて引き剥がし、スタンドでキムラロックを狙うところで謎のブレイク。
その後も、打ち合いを望んで、前に出て距離を詰める渋谷に対して、終始下がりながら、テイクダウンの機を伺うスタイルのモライシュという構図が続く。4Rの終盤、モライシュの右ハイキックで左目の上を切り出血するアクシデントに見舞われるも、この頃には、前に出るスタイルの渋谷に対して、観客の支持もはっきり渋谷寄りになった。
5R戦い切った判定の結果、ジャッジ三者ともモライシュを支持して王座防衛。試合終了のゴングの後、勝利を確信していたという渋谷にとっては不満は残るだろうが、最強王者に対して、はっきりと爪痕を残す結果となった。
「試合が決まってから試合までの期間は一か月で短かった。最初はもって3ラウンド、確実に大怪我させられると思ってたけど、結果的に5ラウンド闘いきることができたし、その間、一度も不安になることも恐れもなかった。たった一か月で人は変われるってことを実感しました。一言で言うと、腹が据わった、肝が据わったって感じです。何があっても驚かない、この先の人生で大きな宝を得たことが、一番の収穫です」
街の不良から世界王者へ。今後も、渋谷の闘いに注目していきたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/丸山剛史>
総合格闘技(MMA)に馴染みのない読者に説明すると、これは異例の大抜擢である。渋谷は、修斗、DEEPなど、日本の主要なMMA団体でのプロ実績のほとんどない“地下格闘技上がり”の選手。彼が選手契約したOFCは、青木真也ら、日本のトップファイターが主戦場とし、ファイトマネーも桁違いに大きい。不良上がりの格闘家としては、最高のビッグチャンスといえるのだ。
修斗南米王者からOFC世界フライ級王者となったアドリアーノ・モライシュのMMA戦績は12勝1敗。いわゆるUFC以外の選手のなかでは、世界最強の称号を欲しいままにしている実力者だ。一方の渋谷の戦績は12勝2敗2分。昨年9月にはTTF CHALLENGE02でパンクラス・スーパーフライ級1位の古賀靖隆を破り、09年8月からは2分をはさむ負けなしの10連勝を達成している。その実績が、日本に視察に来たOFC代表のビクター・クイの目に止まったというわけだ。
「アドリアーノは、OFCの選手のなかで、唯一やりたくない相手。でも、後悔はしたくないし、腕の一本や二本は惜しくないから絶対にタップはしない。気持ちで負けないために、試合前の半月は、格闘技のトレーニングではなく、フィジカルと精神的トレーニングを徹底しました」
一度たりともギブアップ負けをしたことのない渋谷。この強靭なハートを持つ男が、大舞台でどんなファイトを見せるのか。写真リポートと合わせてその模様をお伝えする。
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