『今夜はブギー・バック』がなければ、日本のヒップホップはもっと悲惨だった【宇多丸×Bose×サイプレス上野】

宇多丸(RHYMESTER)、サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)、Bose(スチャダラパー)

左から、宇多丸(RHYMESTER)、サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)、Bose(スチャダラパー)

 ’90年にデビューし、今年25周年を迎えるスチャダラパーのBose。ラジオや雑誌コラムでも活躍してヒップホップ界と世間の繋ぎ役を担う、RHYMESTERの宇多丸。2人に憧れてラップを始めたサイプレス上野。この3人に「’90年代以降の日本語ラップ史」をテーマに鼎談してもらったところ、「ヒット曲の重要性」についても語り合われることに。貴重な鼎談の一部をご紹介しよう。

上野:中1のときラジオで(スチャダラパーの)「今夜はブギー・バック」が流れてきたんですよ。もともとアメリカのヒップホップが好きだったんで、最初はバカにしてたんですけど、聴いてるうちに「あれ? かっけえな」って思って、一気にはまりました。『FINE』とか読んでシーンの空気を感じながら、ひたすら買ってましたね。渋谷に毎週行ってるみたいな。

宇多丸:やっぱりヒットは大事だよ。「ブギー・バック」がなければ、日本のヒップホップはもっと悲惨なことになってたと思うし。からかわれるのは別にいいの。いいんだけど、ネタがいまだに「東京生まれHIPHOP育ち」(「Grateful Days」)と「DA・YO・NE」と「ブギー・バック」しかないのがね。

Bose:いじれるレベルのヒットがないよね。

宇多丸:だから一定量のヒットをシーンから出すのは大事なことなんだけど……すいませんねえ。

Bose:(笑)。みんなを代表して謝った。

宇多丸:いや、ほんと。僕らの力不足です。

Bose:「ブギー・バック」が売れたのも結果論だよね。マッチョなラップのパロディみたいな曲だから。ラップとしてわかり易い正統派が先に売れて、そこにあれなら本来もっと面白いんだけど。

宇多丸:でも、それは日本では考えづらいよ。マッチョなものが本当に苦手だから。

Bose:当時は日本語のラップが根づいてないから、地方の不良みたいなコたちにはまだ届いてなくて、面白さや魅力がきちんと伝わっていなかっただけでしょ。

宇多丸:その間口を広げたのが、ジブさん(ZEEBRA)の「MR.DYNAMITE」だよね。ラップの技術をちょっと単純化してみせて、かつ「ワルいですよ~」と、あえてわかりやすく。当時、彼がつけたイメージが、たぶんみんなの……。

上野:ラップのイメージですよね。「バスじゃモロ最後部な奴ら」(「MR.DYNAMITE」のパンチライン)って、いまだに言いますからね。

Bose:レベル高いよね。たけしのハガキ級。「こんな悪いヤツはイヤだ!」みたいな(笑)。

宇多丸:でも、パンチラインってそういうことだからね。アメリカのギャングスタ・ラップとかも同じだよ。「悪いヤツ自慢」ばかり取り沙汰されるけど、あれだってユーモア込みの面白さなんですよ。でもそのリテラシーが、日本ではね……俺らの力不足で、いまだに大幅に遅れてる。

※4/21発売の週刊SPA!の「エッジな人々」では、宇多丸、Bose、サイプレス上野の3氏によるディープな鼎談を掲載中!! 「日本語ラップの過去、現在、未来」について大いに語られているので、ぜひご確認を!!

取材・文/高岡洋詞 撮影・湿板写真/本間 寛 メイク/奈津 再構成/SPA!編集部

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