“40歳で余命宣告を受けた”ラッパーが語る死生観「余命5年はリアルだった」
音楽、映画、文筆、各種番組出演と、多方面で活動を続けるラッパーのダースレイダー氏が、『イル・コミュニケーション―余命5年のラッパーが病気を哲学する―』(ライフサイエンス出版)を11月30日に上梓した。
2010年に33歳で糖尿病からの脳梗塞に倒れ、2017年には腎機能の悪化で余命5年の宣告を受けた同氏が、その半生を振り返りながら、生きる原動力となったHIPHOP哲学などを語った本書。満身創痍のなか、精力的な活動を続けられる軸の部分に触れているわけだ。
今回は執筆に至った経緯や、病気との向き合い方について、本人を直撃。自身の死生観について語ってもらった。
――『叢書クロニック』第1弾となる本書。さっそくですが、まずは執筆の経緯からお聞きできればと思います。
ダースレイダー:『叢書クロニック』の立ち上げに際して、編集者の方から「病気という視点から体験や考えを1冊にまとめてみませんか?」と、ご提案いただいたのが直接のきっかけでしたね。
――『叢書クロニック』は医学、人文、アートなどさまざまな領域の著者の語りを通じて、「病の意味」と「健康の多様性」を捉え直すことを目的に創刊されたシリーズとのことですね。
ダースレイダー:音楽や執筆、YouTubeなどもそうですけど、やはり僕のいろんな活動って病気に対する向き合い方とセットで切っても切れないところがあるし、そういう意味ではシリーズの主旨に沿った本が書けるかもなと。いろいろ幅広くやっているように見えて、僕の中では実はずっとひとつのことをやり続けているという感覚もありますよ。
――どれくらいの執筆期間で書き上げたんでしょうか。
ダースレイダー:1年ほどかかっています。実際に書き進めていくなかで、当初想定していた内容から変わっていった部分もあり、少しずつ具体的な本のイメージが出来上がっていきましたね。2021年に出した『武器としてのヒップホップ』(幻冬舎)で触れているような内容もあるんですけど、コロナ禍などを経て病気や病人、死への恐れや不安については、自分の中でさらに解像度が上がった感覚がありました。
――40歳で余命宣告を受けた瞬間のエピソードが、本書でも詳しく書かれていて印象的でした。
ダースレイダー:デイヴィッド・リンチの映画みたいな感じで、わりと変なところに迷い込んだような、世界の色が変わったような感覚でしたね。「初対面のお医者さんから、突然すごいこと言われているなぁー」って。「何も手を打たなかったら余命5年」ということで、一緒に治療して頑張りましょうという説明だったんですけど。
すべての活動は「病気とセット」
「死への恐れや不安」について解像度が上がった
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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