ニュース

中国は“殺人マシン”だらけ…エスカレーター、立体駐車場、ATMでも事故が

 湖北省荊州市でエスカレーターの踏み板が外れ、女性が回転軸に巻き込まれて死亡した事件では、顛末をとらえた監視カメラの映像が全世界に衝撃を与えた。
エレベーター事故の様子

7月に広西チワン族自治区梧州市で起こったエレベーター事故の様子

 さらに6日後には、上海市のショッピングモールで、エスカレーターの清掃をしていた男性が同様の事故に巻き込まれ、片足を切断する事故も起こった。  中国国家質検総局の発表によると、6月末までに全国で検査されたエレベーター・エスカレーター約236万基のうち、11万基以上で安全上の問題が発見されたものの、2.6万基以上は修理を受けることなくそのまま使われているという。昨年1年間で中国ではなんと37人がエレベーター・エスカレーターの事故で命を落としているのだ。  こうした状況を受け、中国ではある風潮が広がっている。広州市の日系メーカー勤務・安岡栄太郎さん(仮名・36歳)の話。 「1、2階分の移動なら階段を使う人が増えましたね。おかげで駅などではエスカレーターはがら空きなのに、階段は混雑するという珍現象が起きている。うちのオフィスは5階なんですが、汗だくで階段を上ってくる社員もいる。次の健康診断では、社員のメタボ率が下がりそうですよ」  巷に潜む“殺人マシン”はエスカレーターだけではない。  上海市在住の旅行会社勤務・向井典明さん(仮名・42歳)も、自身の体験を話す。 「商業施設の立体駐車場に車を入れて下りようとした時、車室が勝手に動き出した。慌てて車内に戻り、停止するのを待ちましたが、ヘタしたら車室に体が挟まれていた。係員も突っ立っているだけで助けてくれなかった」  重慶市在住の自営業・砂川孝昌さん(仮名・49歳)も言う。 「近代的なオフィスビルの自動回転扉に傘を挟まれたことがあったんですが、金属の芯をへし折っても扉は回転し続けていた。安全装置が全く機能していなかったんです。自分の手足だったらと思うとゾッとしますよ」  また、『華商報』(7月28日付)によると、陝西省西安市のATMで、預金を引き出そうと暗証番号を入れようとした女性が感電する事故が起きている。2本の指の爪が割れ、流血する大怪我を負った。調べによると、ATMから200ボルトの漏電が発生していたことが判明。命に関わる事態となっていた可能性も指摘された。  さらに重大事故が多発しているのがガソリンスタンドだ。セルフ給油機の火災事故は、報道ベースで確認できるものだけでも、今年に入り8件も起きている。いずれも静電気が原因だが、構造上の問題があることはたしかだ。  日常的に利用する街中の設備で人命に関わる事故が続発する理由について、広州市のコンサルティング会社・アライジェンスの太田基寛氏はこう話す。 「これらの設備に一貫して言えるのは、製造と保守点検がまったくバラバラに行われているという点です。責任の所在が曖昧なので、双方とも仕事がずさんになる。また、少々不具合があっても気にしないという国民性も一因。日本人のように、ちょっと異音がするだけで、管理者に連絡する国民性ならば、かなりの割合で事故は防げるのではないか」  この国では、疑心暗鬼くらいがちょうどいいのかもしれない。 <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
中華バカ事件簿

激動の現代中国社会をイッキに覗き見!中国実話120選

おすすめ記事