ビンス・マクマホンのXFLにアメリカじゅうのメディアが大騒ぎ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第333回(2001年編)
TVショーとしてのXFLは、やっぱりWWE的なアプローチになっていた。毎週土曜、日曜の夜におこなわれる公式ゲーム4試合のうちの“Aゲーム”2試合は、4大ネットワークのひとつであるNBCがプライムタイムに全米中継し、“Bゲーム”2試合はUPN(地上波)とTNN(ケーブル)が完全生中継スタイルでオンエアした。
“Aゲーム”の実況・解説は“ロウ・イズ・ウォー”“スマックダウン”でおなじみのジム・ロスとミネソタ州知事(当時)ジェシー・ベンチュラのタッグチームで、“Bゲーム”はジェリー“ザ・キング”ローラーとマット・バスジャーション(スポーツキャスター)のコンビが担当した。
NBC“サタデーナイト・スポーツ”で全米生中継されたラスベガス・アウトローズ対ニューヨーク/ニュージャージー・ヒットメン(2月3日=ラスベガス)のシーズン開幕戦は10.3パーセント(占拠率17パーセント)の高視聴率をスコアした。
これは前年2000年10月14日、ニューヨーク・ヤンキース対シアトル・マリナーズのMLBアメリカン・リーグのプレーオフ第4戦が同番組ワクではじき出した8.1パーセント(占拠率14パーセント)のレーティングを大きく上回る数字だった。
機関銃をかまえていたアメリカじゅうのマスメディアは、やはり“XFLバッシング”の総攻撃に打って出た。ふだんはプロレスと接点を持たないニュース・メディアの大半は、ジム・ロスとベンチュラのプロレス的テイストの実況・解説を“演出された口論”と非難した。
ビンスにとっては、元プロレスラーでタレント政治家のベンチュラの起用は、大新聞の政治面・社会面での批判をあぶり出すための逆説な人選だった。
シーズン第2週(2月10日)、ロサンゼルス・エクストリーム対シカゴ・エンフォーサーズの公式ゲームは、NBC“サタデーナイト――”で4.8パーセント(占拠率8パーセント)の視聴率をスコアするにとどまった。ハーフタイムにはザ・ロック、ビンスとステファニーのマクマホン親子らが確信犯的に画面に登場した。
ビンスの手にかかったら、フットボールだってプロレスになる。WWEの人気とその市場価値はだれも否定できない。じつはアメリカのマスメディアはそれをいちばん恐れていた。
アメリカのマスメディアをてんてこ舞いさせたXFLは、2001年の1シーズン終了後、あっけなく活動休止。フットボール・リーグ設立というビンスの長年の野心の結実、大きなん負債を残しての解散というふたつのリアリティーが残った。
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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