レイガンズ先生はなんでもわかってくれる――フミ斎藤のプロレス読本#020【ロード・ウォリアーズ編5】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
学校の先生でなくても、おケイコごとの師匠でなくても、政治家さんでなくても、なんとなく自然に“先生”と呼びたくなってしまう人がいる。ロード・ウォリアーズのよき理解者、ブラッド・レイガンズはそういう人物である。
アメリカでは学校の教師を指すとき以外に“ティーチャー”という表現はあまり使われないが、もしアメリカ人が日本語の“先生”のニュアンスを少しでも理解できたら、たぶんアメリカのプロレスラーの半分くらいはレイガンズを先生と呼ぶだろう。
レイガンズ先生はレスリング・スクールの校長。ミネソタ州ミネアポリス郊外ハメルの道場には、週に200通くらい、入学申し込みの手紙が届く。これはというプロフィルの持ち主もいれば、やっぱり箸にも棒にもかからない志願者もいる。
ベイダー、スコット・ノートン、リック・スタイナー、トニー・ホーム、ドン・フライ、JBL(ジョン・ブラッドショー・レイフィールド)らがレイガンズ道場の卒業生だ。
ミネソタ大レスリング部出身のブロック・レスナーも、レイガンズ道場でプロレスラーとしての“改造手術”を受けた。
ナスティ・ボーイズのブライアン・ノッブスとジェリー・サッグスのふたりは、スポーツ歴も運動センスもルックスもペケだったけれど、見かけによらぬまじめさとめったなことでは落ち込まない性格でレイガンズ道場のトレーニング・メニューに耐え、プロレスラーになった。
だから、本人たちの努力次第でなんとかなるというケースもなくはない。アメリカじゅうからやって来る道場生たちにプロフェッショナル・レスリングの手ほどきをするのがスクールの基本的なカリキュラムだが、レイガンズ先生にとってもっともやっかいな作業は、プロレスラーの卵たちにレスリング・ビジネスのなんたるかを話して聞かせることだ。
新入りの道場生には必ずふたつの事がらを教える。これをしっかり頭にたたき込んでおかないとプロレスラーとして成功することはむずかしい。
ひとつめは、このビジネスではタイミングがものをいうということ。“運”と置き換えてもいい。
ふたつめは、自分よりもキャリアの長い選手のアドバイスをよく聞くこと。つまり、先輩のはなしに耳を傾けること。新人レスラーがいちばん犯しやすいミステークは自己流に陥ることなのだという。
なんだか、プロレスにもプロレス以外のことにもあてはまるような訓辞だが、レイガンズ先生はまずこのことをみんなに知ってもらおうとする。
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