ウォリアーズの休日inミネアポリス――フミ斎藤のプロレス読本#019【ロード・ウォリアーズ編4】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
1985年
待ち合わせの場所は、ミネアポリスのダウンタウンでも指折りの高級バー“ラニオンズ”だった。道順は電話で教わった。
北一番街とヘネピン通りがぶつかる交差点を右に曲がり、1ブロック歩いてからワシントン通りを左に曲がれば、まっすぐ歩いているうちに右側に店の看板が見えてくる、と電話の主はいった。
薄暗いバーのドアをそおっと開けると、ホークは白いウェスタン・シャツの下に鍛え抜かれた肉体を封じ込め、なるべく目立たないようにカウンターのいちばん端の席に腰かけてワイルドターキーのオン・ザ・ロックをゆっくりと口に運んでいた。
逆モヒカンのヘアスタイルを隠すように、頭にはきっちりと黒のバンダナを巻いている。よく見ると、バンダナには“Road Warrior”という文字が赤い糸でちいさく刺しゅうされてた。
「待ってだぞ。まあ、座れ」
ホークは、バーテンダーにビールを注文してくれた。正直にいうと、ぼくはまるっきりお酒が弱いのだが、こういうときは「ぼくはコーラで」なんていわないほうがいい。
プロレスラーになるまえからよく遊びにきていた酒場らしく、店のスタッフもみんなホークをよく知っていた。
「ここ2年くらいで初めて2週間のオフをとることができたんだ。こうやってミネアポリスに帰ってくるとほんとうに安心するぜ」
プロレスで成功し、アメリカじゅうを飛びまわるようになったホークは、この2年ほど休みらしい休みをとったことがなかったのだという。
テレビに出るようになって顔と名前が売れてしまったせいで、空港やレストランで知らない人からサインをせがまれたりするようになった。
買いものでもしようと思ってノースサイドあたりを歩いていると、いかにもウェートトレーニングをやっていそうな体のごつい男たちからいきなりケンカを売られたりするようになった。
かつての不良少年ホークは身も心も疲れ、セレブリティーのストレスを感じていた。
「オレの地元の友だちに会ってみねえか。じつはきょう、これからあるパーティーに顔を出すことになっているんだ」
ホークがいうところのパーティーとは、スラム街でひんぱんにおこなわれているどんちゃん騒ぎのことだった。
旧友のひとりがガールフレンドと婚約したので、オトコ友だちだけが集まってバチュラー・パーティーを開いているのだという。
「これからいっしょに行かねえか。アニマルもあとから来るから」
ふだん着のロード・ウォリアーズと付き合っている友だちと会ってみるというのはおもしろそうだった。
ふたりのプライベートな顔を知っている証人たちだ。ホークとアニマルのパーティー仲間とはどんな男たちなのだろうか。
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