怪傑ホークRoppongi Nightをゆく――フミ斎藤のプロレス読本#028【ロード・ウォリアーズ編エピソード13】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
カウンターのすぐ後ろのキャビネットにはワイルドターキーとかジムビームスとかハードリカー系のボトルがきれいに並んでいて、ボトルとボトルのあいだから顔を出すような感じでUFOキャッチャーの“ホーク人形”がひとつだけ控えめに飾られている。
“ミストラル”は、六本木交差点から飯倉・東京タワー方面に向かって右側の歩道を歩いていくとひとつの信号の角――かつてマクドナルドとドーナツ屋さんがあったちいさな三差路の角は、いまは24時間営業の居酒屋とチェーン店のラーメン屋さんになっている――のさらに隅っこにあるちいさなカウンター・バーだ。
“怪傑ホーク”は、いつもこの店の奥のほうで立ったり座ったりしながらビールを飲んだりしている。
バーテンダーのジュンちゃんがいて、常連のサトーとヒロシマがいる。狭い店内の壁と天井には黒のマジックでびっしりとグラフィティが書き殴られていて。頭上のスピーカーからはハードロックのノイズが心地よくこぼれ落ちてくる。
おたがいに耳元で軽めにどなり合わないと会話にならない。でも、そんなに無理しておしゃべりをしなくたっていい。
ホークは、サトーとヒロシマを連れだって店の外に出た。そのへんをほっつき歩いていれば、なにかおもしろいことに出くわすかもしれない。“ハンバーガー・イン”と“びっくり寿司”のあいだのゆるい坂道の両側にはこれでもかというくらいナイトクラブが密集している。
このあたりは無国籍エリアだ。ネイティブのジャパニーズよりも外国人のほうがはるかに多い。
「ソー・メニー・ファッキン・ガイジン・チックスSo many fuckin’gaijin chicks(ガイジンの女ばっかりじゃねえか)」
ホークはここ10年ほどの六本木の街の移り変わりをつぶさに観察してきたウィットネスである。たしかにホワイト・ウィメンの数は急激に増加している。みんながみんな、英会話の先生やモデルやフィットネス・インストラクターというわけではないだろう。
ふだんはいったいどこでどんな仕事をしている人たちなのかはわからないけれど、とにかくガイジン・チックスだらけだ。
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