今年のプロ野球、「WBCの影響」はただの言い訳なのか? 2017年シーズンを元代表選手が総括
――千賀投手は育成ドラフト4位での入団。ファンの立場から見ていると、ドラフト上位でも活躍していない選手だったり、逆にドラフト下位なのに1年目から1軍で活躍していたりしているのが不思議に感じます。
里崎:ドラフトはアマチュア時代の評価であって、プロの評価じゃないので。アマチュア時代が良かったからといってプロでいいとは限らないですよね。馬でも早熟と晩成があるじゃないですか? その違いもありますね。
――そこまではスカウトの方とかにも見分けられない。
里崎:わからないでしょう。そこまで見極められたら、優秀な者しか残らなくなってしまいます。
――最近だと、広島は生え抜き選手が主力となって躍進していますが、それはスカウトの方が優秀ということなのでしょうか?
里崎:スカウトが優秀でも、育成がダメならチームは強くなりませんし、そこは一概には言えないんじゃないですかね。そもそも最近は、ほとんどのチームがほぼ自前ですし、仮にスカウトが優秀で、育成上手と言われるチームであっても、今季の日本ハムのように前年の日本一からいきなり低迷することもある。スカウトが優秀ってだけでチームが強くなるなら、一昨年までの広島はなんだったのかという話にもなりますしね。
――つまりスカウトの段階だと、くじを引くようなものという感覚なんですか?
里崎:そうですね。あとは、結局は数が多いかどうか。1000人中の50人いいのを集めるのと、100人から50人集めるのか、その違いですよ。当然、母数が多いほど確率は高いですから。
――助っ人外国人に関しても同様ですか?
里崎:まあ、事前にはほとんどわからないですよね。海外での成績をそのまま日本には持ってこられないですから。
――よく優良外国人が多いチームというふうに言われたりもしている気がするんですけれども、それも気のせいでしょうか……?
里崎:それはいっぱい取ってきるからですよ(笑)。いっぱい取ってきて、あとは金を使えばね。やっぱり年俸の高い選手のほうが比較的当たる確率も高いですよね。
――助っ人外国人に関しては、来日当初は成績がふるわなくても、我慢したところで後から伸びてくる選手もいます。
里崎:使わざるを得なかったからじゃないですか(笑)。別のやつがいたら我慢する必要はないじゃないですか。別のやつがいなかったら我慢をするしかないので。
――それは先見の明があったとは違うということなんですか?
里崎:だって代わりがいないんだから使うしかないじゃないですか。
――例えば、監督であったり、コーチであったりというのも、ポテンシャルを見抜く能力というのは、ファンがイメージしているよりも持ち合わせていないということなのでしょうか?
里崎:見抜いたところで結局はやるのは本人だから。こいつはいけると思っても、そいつがバットを振らなかったらいけないですし。やるかどうかはそいつ本人。普通の会社の人事部とかだって全員で見極められます?
――いえ、無理だと思います。
里崎:でしょう。それはどの世界でも無理。そんなのがわかっていたら苦労しませんよ。人間のことなんてどうなるかわからないでしょう。
――選手個人が、あるいは会社でいうとサラリーマンが、効果的にアピールするための方法を里崎さんはどう考えますか?
里崎:結果を出すだけですよ。結果を出したら、試合に出られるんじゃないですか。2軍の試合とか練習の紅白戦とか、実戦の練習もありますから。結果以外に重要なことはないし、過程は誰も評価しない。野球界じゃなくても世の中がそうなので。本当のことをみんな言わずに、きれいごとを言っているだけであって、世の中で結果も出ないのに過程を評価している人を見たことないです。
――甘い言葉で頑張ったからみたいなことがあっても……。
里崎:慰められているだけで、それは評価じゃない。かわいそうにと思って慰められているだけですよ。評価とはまったく別物。
――特に野球選手の場合、数字がもっとシビアで、1年でクビを切られたり、給料がぐっと下がったりします。
里崎:プロ野球選手は契約社員であって、そもそも正社員じゃない。一般企業の契約社員の人でも結果を出さなければ1年でクビになるでしょう。それにチームが強くても自分が補欠だったら給料は上がらないですよ。逆にチームが弱くても、自分がレギュラーで成績を残したら給料は上がります。出てなんぼですからね。
[里崎智也]
鳴門工(現鳴門渦潮高)、帝京大学を経て、98年のドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズを逆指名して、入団。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝く。14年限りで現役引退、現在はプロ野球解説者、評論家を務める。近著『捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』』が好評発売中
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