更新日:2017年10月22日 09:08
スポーツ

戦力の底上げが進まないサッカー日本代表。控え組の起用で露呈された現在地

格下相手の試合にこそ求められる目的意識

 だがもちろん、そういったアジアの環境は日本にはどうすることもできない。それであれば、なおさら1つ1つの試合で個々がいかに目的意識を持って取り組めたかが重要になってくるはずだ。欧州や南米の各チームが常に厳しい戦いに晒されている一方で、W杯出場32カ国の中でも格下にあたる日本がただ漫然とテストマッチをこなしていたのでは、その差は広がるばかりだ。相手がニュージーランドだろうがハイチだろうが、与えられた時間の中で最大限のアピールをしようと、あるいは自身の課題をクリアしようと躍起にならなければいけないはずだ。本大会が8ヶ月後に迫っている状況下で、意味のない試合など1つもないのだ。  にも関わらず、この日千載一遇のチャンスを得たはずの遠藤航、東口順昭といった選手たちのプレーからは、「このチャンスを必ず活かしてやる」といった気概は1ミリたりとも感じられなかった。普段出場機会の少ない選手たちが多く起用されたことでコンビネーションの面では難しさがあったはずだが、そういった連携面以前のメンタル的な問題が大きかったのは明らかだ。  試合後、ハリルホジッチ監督は「何人かの選手の精神的な弱さ、脆さには失望した。日本代表でプレーするにはもっと考えないといけない」と語ったが、この言葉がまさに本音だろう。あれだけモチベーションのないプレーを見せられてしまっては、監督にできることなどもはや残っていない。この試合の結果に関して監督に責任を問うのは気の毒というものだ。もちろん、選手のモチベーションを管理するのも監督の仕事ではあるが、ピッチでプレーするのはあくまでも選手だ。各自が明確な目的意識を持ってピッチに立つのは言われずとも当たり前のことであって、その“当たり前”がこれだけできなかったのでは話にならない。

進まないチーム強化。本大会までにチームは完成するのか

 日本は来月、ブラジル、ベルギーという強豪国との2連戦を戦う。ニュージーランド、ハイチとの2連戦に気持ちを持ってこれなかった選手であっても、相手が強豪となれば自ずとモチベーションは高くなるだろう。先日の2連戦で散々なプレーを見せた選手が、一転して素晴らしい活躍を見せる可能性もゼロではない。  だが、仮に強豪国を相手に良いプレーをしたとしても、相手によってモチベーションが大きく左右されてしまうような選手に、本番での活躍が期待できるだろうか。日頃のクラブチームでのトレーニングの段階から、常に来年の本大会を見据えて取り組むことができているか、ブレずにそれを継続できているかが重要なはずだ。先日のハイチ戦では、“レギュラーの座を奪取して本番のピッチに立ってやる”といった気概を持って日頃から取り組んでいる選手が控え組の中にほとんどいない、という事実がはっきりと明らかになってしまった。おそらく、もう二度と招集されない者も出てくるだろう。  ハリルホジッチ監督としては、新戦力の発掘、チームの底上げといったテーマを持って今回のキリンチャレンジカップに臨んでいたはずだが、その目論見は見事に外れてしまった。11月の欧州遠征を経て徐々にメンバーを絞り込んでいく段階に入っていくが、いまだチーム全体の底上げ、ブラッシュアップといった作業ははかどっていない。ハリルジャパンはいつ本番仕様のチームに成長を遂げるのだろうか。それとも、宿題を終わらせられないまま本大会を迎えてしまうのだろうか。  ロシアW杯開幕まで残り8ヶ月。本番までに残された時間は、ごく僅かだ。 取材・文/福田 悠 撮影/難波雄史
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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