更新日:2014年06月18日 11:22
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「ブラジル代表戦の日は、街から人がいなくなる」は本当か?【W杯現地レポ】

 現地時間18日、ブラジル代表は、ともに初戦で勝ち点3をあげたメキシコと対戦した。試合は0-0のドロー。両者勝ち点1づつを上積みし、グループリーグ突破に前進した。  記者はこの試合を日本代表が第2戦のギリシャ戦を戦うナタウの地で見た。 「ブラジル代表の試合があるときは、通りから人っ子ひとりいなくなる」。幾度とブラジル人から聞いた話だが、にわかには信じがたい話だった。開幕戦はファンフェスタというFIFAが設けたパブリックビューイングで見た記者。パブリックビューイングの場所は街から離れており、前回はその雰囲気を体感出来なかった。だから今回は敢えて街なかで見ることにした。  午前8時。バンバンバン!という花火の音で起床。テレビではブラジル代表の宿舎から生中継で直前情報を伝えている。司会者とリポーターは戦いの地である北東部の街・フォルタレーザの天気予報をハイテンションで伝えており、午後4時開始の試合にも関わらすスタジアムに詰めかけているブラジル、メキシコ両サポーターの応援合戦を中継している。  午前12時、ナタウ随一のビーチリゾート・ポンタネグラの奥の奥。地元の人も「危ない地域だから気をつけて!」と警告する地域の安宿に宿泊している記者は、日本の決戦の地「アレーナ・ダス・ドゥナス」を見学しようと、宿を出発した。すると街がなんだかそわそわしているのを肌で感じる。近所の悪ガキ(に見える)達が記者を見るや「日本人、ブラジル!ブラジル!と言って」と声を掛けてくる。それに応じると「カネくれよ!カネ!」と恩を仇で返すようなことを平気で言ってくる。その一方で、親たちは緑と黄色の飾り付けを通りに施し、国旗を掲げ臨戦態勢だ。  13時。灼熱の太陽のなか、徒歩で1時間以上かけて、スタジアム至近の高級ショッピングセンター「ナタウショッピング」に到着。19日ここは日本人サポーターの拠点となると言われる、ショッピングセンターだ。店内の案内を見ると、妙な文面が。「ブラジル代表戦の日は、試合開始の1時間前から試合終了1時間後まで閉鎖します」。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=663541
ナタウショッピングセンターから追い出される人々

試合開始1時間前。ナタウショッピングセンターから追い出される人々

 15時。試合1時間前。臨時閉店したナタウショッピングから追い出される人々が、続々とバスターミナルに向かってくる。なんの抗議の声を上げることもなく粛々としているのだ。そのなかには日本人の姿も散見されたが、いまいち何が起きているのか把握していないようで警備員に質問をしていた。それを見て「日本人がいっぱいいるぞ!」と驚きの声をあげるナタウの人も。
家路を急ぐ人々

家路を急ぐ人々でバス停はごったがえしていた

 ブラジル戦を見るために、家路を急ぐ人々でショッピングセンター前のバスターミナルは大混乱。停留所に来るバス来るバスが乗車率120%を超える乗客で、まさにすし詰め状態。なかには乗車拒否をするバスもいて、ターミナルで待つ人々からブーイングが上がる始末だった。  ナタウショッピングの向かいのローカルなショッピングセンターも駐車場はガラガラ、人もまばらであった。ゆったり歩く北東部の人々に似つかわしくなく早歩きの人々見て、これが「有事」であること悟る。  見慣れた宿の近くに帰りたい。しかしバスは待てど暮らせど来ない。なんとかタクシーを捕まえ、宿付近に戻ったのは試合開始の15分前。通りの店々はシャッターを閉じ、唯一開いている飲食店に黄色いユニフォーム姿の人が集まっている。相変わらずバンバンバン!と断続的に上がる花火。気の弱い記者はその爆音にいちいち肩をすくめてしまう。  試合開始直前。車はまばら。国歌を大声で唄う声があちこちから聞こえてくる。  結果はスコアレスドロー。それにも関わらず、テレビ観戦中も耳をつんざくほどの爆音で花火は上がり続け、試合終了後2時間を経ってもなお散発的に上がっている……。  ショッピングセンターから客を追い出し、バスは試合を家族と観たい人で、帰省ラッシュの如くすし詰め。爆音の花火を上げ、試合を見守る。この国ではサッカーは生活の一部なのだと感じる一日だった。 <取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)>
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