ニュース

紀州のドン・ファンが、コンドーム販売から富豪になった商才とは

 5月24日、“紀州のドン・ファン”こと野崎幸助氏が、77歳で亡くなった。2016年に発覚した、元恋人による盗難事件で突如有名人となって以来、「1億円なんて紙屑」発言や55歳差の結婚などで、世間にインパクトを与えてきた人物である。  死因は「急性覚醒剤中毒」。現在もその不審な死が大きく注目され、連日メディアに取り上げられているが、どのようにして財をなしたかはあまり知られていない。野崎氏の著書である『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』と『紀州のドン・ファン 野望篇 私が「生涯現役」でいられる理由』(ともに講談社+α文庫)を紐解き、彼が成功した理由を探ってみた。(以下<>は著書からの引用)
紀州のドン・ファン

『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社+α文庫)

会社勤めを辞めて鉄屑拾いに

 野崎氏とは、どんな人物だったのか。週刊新潮6/14号によると、彼を知る知人が「関係を持った相手は何人もいます。一晩50万円で応じる女性もいれば、20代の子だと数百万円もらうこともあったようです」と証言している。これまでに4000人の女性と付き合い、30億円にものぼる金額を貢いできたというのだから相当なプレイボーイと呼べるが、そもそも性の目覚めはいつだったのか……?  小さな酒屋の三男坊として生まれた野崎氏。14歳の童貞喪失時に「世の中にはこんなに楽しいことがある」と知り、「以来60年、世界中の美女とエッチしたいと考えながら、日々を送るようになった」という。  とはいえ、そこから女性に貢ぐことができるほどのお金持ちになるまでは相当な苦労があったに違いない。  著書によると、中学校卒業後、氏は地元の和歌山を出て、名古屋の酒造メーカーに入社する。朝鮮戦争特需による好景気ではあったが、庶民はまだ実感できなかった頃だ。
<給料が安いのにこき使われて、へとへとになってやっと寮に戻ってくるような毎日でした。酒の瓶を洗ったり、重い酒のケースを運んだりする仕事でしたが、もたもたしていると容赦なく先輩からの拳骨が飛んできます。今ならブラック企業に認定されるような職場も珍しくなかった時代のことです>
 このままではうだつが上がらない、つまりいい女が抱けない。約1年で故郷に戻り、家業を手伝いながら鉄屑拾いに転職した。
<太平洋戦争時でアメリカのB−29爆撃機から投下された爆弾の破片を回収したり、工場から出る鉄屑を整理したりして、それを鉄屑屋に売却するという仕事です>
 当時、銅線や鉄屑は高く売れ、流行のビジネスだったそう。会社の上司に命令されるのではなく、自分で考えて動き、サボれば収入がなくなるスタイルが野崎氏にハマった。朝から晩まで休むことなく鉄屑を探しまわり、以前よりは高収入に。しかし、女と交際するほどは貯まらない。
<プレゼントのひとつもあげられない男がモテるわけはありません。私はどうしたら軍資金を調達できるのかと常に考えておりました>
 モテるためには努力を惜しまない。“仕事ができる男がモテる”とは現在の恋愛メディアでもたびたび言われているが、野崎氏はウン十年も前から実践しようとしていたのだ。

時代を読んだコンドームの訪問販売が当たる

 「もはや戦後ではない」のフレーズが流行し、日本は高度経済成長期に突入。急激に進歩していく世間を横目に、野崎氏は鉄屑拾いに専念していた。  まだまだ資産家と呼べるにはほど遠いが、そんな彼がいかにして大金持ちとなったのか。「好きなことを仕事に」とはよく聞く言葉だが、性に対して真摯に目を向けていた野崎氏だからこそ発見できた大きな“ビジネスチャンス”とは……!?  ある年の春、彼に転機が訪れたという。肥溜めの横を通ると、ビニールのようなものがいくつも浮いているのに気づく。使用済みのコンドームである。
<肥溜めにこれだけの量のコンドームがあるということは、エッチはしたいけど子だくさんにはなりたくないという時代になっているのだなと想像したのです。そこで私は閃きました>
 今でこそ簡単に手に入るコンドームだが、かつては薬屋の奥にあり、店員に声をかけないと購入できなかったのだ。「避妊具ください」とは、なかなか女性にはハードルが高い。こちらから売りに行けば、きっと買ってくれるに違いない!
<「コンドームを売ってくれませんか?」。大阪市内の問屋を何軒もまわりました。1円でも安い仕入れをしなければ儲けが減りますので必死でした>
 鉄屑屋稼業で貯めた3万円で、1ダース280円のコンドームを仕入れると、自転車に乗って各家庭へのセールスに出発。慣れないうちは苦しかったが、徐々に勘をつかみ、すぐに軌道に乗せた。奥様方への「実演販売」や、フリーセックス時代の到来も功を奏し、売り上げは右肩上がり。大卒男子の初任給が月1万5千円の時代に、1ダース1200円のコンドームが飛ぶように売れた。愛車は自転車からスーパーカブになった。
次のページ right-delta
コンソーシアム内でも軋轢が
1
2
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート