スポーツ

365日がプロレス記念日! 『プロレスきょうは何の日?』著者・鈴木健.txtインタビュー

――巻頭インタビュー「わたしのプロレス記念日」も最高でした。サイプレス上野さん、獣神サンダー・ライガー選手、ベッド・インの益子寺かおりさんがご登場されています。 鈴木:上野さんはどインディーまで見ている一方で1.4の公式テーマソングを制作されて、仕事と趣味の振り幅が非常に大きい方です。以前、ニコプロに出演していただいたとき、鶴見青果市場という怪奇派の聖地の話が、ものすごく面白かったんですよ。ある怪奇派レスラーが試合中に脚をケガして、そのあとにセコンドについた人が同じところを引きずっていたとか。大会が終わったら主宰している鶴見五郎さんが観客を飲み会に誘うんだけど、さすがにそこへ踏み込んだら行き着くところまで行き着いてしまうので踏みとどまったとか。そういう話が面白かったので、上野さんにお願いしました。 ――獣神サンダー・ライガー選手はいかがですか。 鈴木:今回大きく取り上げた、1.4、8.26、10.9のすべてを経験している選手なんです。1.4、10.9に出場しているだけではく、8.26のオールスター戦を客席から生で見た現役選手は、僕が知っている限りライガーさんだけなんですよ。マスカラスのミニマスクを買ったけど、なくしちゃったとか。お客さん側の風景が語られるのは、39年も経ったいまだからこそ貴重であって、聞けてよかったなと思います。 ――益子寺かおりさんはどうでしょう? 鈴木:アーティスト活動の中でプロレスとコラボして、年越しプロレスでリングに上がって、バラモン兄弟の墨汁を食らったり(笑)。選手以外でそういう経験をしている人ってなかなかいないので、面白くなるだろうなと。かおりさんはある選手のマイクによって、人生を変えられてしまったほどプロレスにのめりこんでいる方なんです。この3人にお願いして、本当によかったなと思います。 ――本書の反響はいかがですか。 鈴木:真新しい情報が載っているわけではないですし、過去の事実を批判する人もいないですから、爆発的なリアクションはないだろうなと思っていたんですよ。演歌みたいなものなんですよね。長く地味に、緩やかに売れていく。それでいいと思うんです。つねに本屋の片隅に置かれていて、たまたま手に取ったら意外と面白い、みたいな存在になってくれれば。でも、一つ目標はあるんですよ。 ――目標とは? 鈴木:ネットプロレス大賞の「最優秀プロレスを伝えたで賞」で評価されたらと思っているんです。ネットプロレス大賞ってネットを通じてプロレスを楽しんでいるファンの投票によるものなんですけど、あの賞はずっと映像メディアか、ネームバリューのある方が1位に選ばれているんです。新日本プロレスワールドであったり、アメトーークだったり、松井珠理奈さんだったり。そういう時代に、紙媒体がどこまで世の中にプロレスを伝えたと思ってもらえるか。僕は有名人ではないので、こういう本が評価されれば著者のバリューではなくプロレスそのものの価値で届いたということになるじゃないですか。週プロ時代から紙媒体でずっとやってきた人間として、それを示せたら……というところですね。 ――ありがとうございました。  私はプロレスを見始めて、3年半になる。現在のプロレスはもちろん大好きだが、現在に繋がる過去のプロレスにも興味が沸いてきたところだ。しかし、過去のプロレスの資料は膨大すぎて、どこから手をつけていいか分からない。本書はWEBのように関連ページが“リンク”されているので、過去をどんどん遡ることができる。私のような新規ファンにとって、入り口として最適な教科書になるに違いない。<取材・文/尾崎ムギ子>
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
1
2
◆Web河出「ネット時代に365日分の出来事を一冊にする意義 プロレスの入り口と、その先へのいざない」 http://web.kawade.co.jp/bungei/2046/

表紙イラスト/榎本タイキ
おすすめ記事