更新日:2018年11月27日 12:28
ニュース

大阪万博、当選の裏側と「建設費1250億円」の課題を猪瀬直樹氏に聞く

愛知万博では経済界が「成功」を後押しした

――決選投票で一騎打ちとなったエカテリンブルク擁するロシアは、プーチン大統領が誘致レースの陣頭指揮を執るなど「強敵」だった。 猪瀬:ロシアは4年前にソチ五輪、今年はサッカーW杯と、ビッグイベントを立て続けに開催するなど成功体験はあったが、最後は大阪が競り勝った。「高齢社会」という課題を、最先端テクノロジーやライフサイエンスで解決していこう――。大阪万博が掲げたテーマは、「成熟国家」である日本に相応しいものだったのではないか。  2度目の東京五輪、2度目の大阪万博は、成熟国家だからこそ成し得ること。だからこそ、「初の開催」であることを武器にしたロシアやアゼルバイジャンに、「2度目」の大阪が悠々と勝てたわけです。これは世界が日本を成熟国家と認めたに等しく、高齢社会という課題解決型の万博は、日本が開催することに価値があるのです。 ――今後は、約1250億円かかるとされる会場建設費をどのように確保するかも課題となる。国と大阪府・市、ならびに経済界で3分の1ずつ負担することで合意しているが、民間は400億円を捻出できるのか。 猪瀬:五輪は都市が開催主体なのに対して、万博は国が開催する。とはいえ、’05年の愛知万博は、トヨタ自動車会長の豊田章一郎さんが誘致決定時に経団連会長だったため、資金集めの「旗振り役」を務めており、地元経済界の貢献があった。そのため、入場者数は目標の1500万人を大きく上回る2204万人を数え、129億円の黒字になっています。国がバックにいるとはいえ、大したことはやってくれないので、首長が当事者意識をもって当たらなければならない。  大阪の長所は、民間が誘致活動に力を入れているところ。歴史的にみても、江戸が武士の町だったのに対して、大坂は商人の町で、伝統的に民の力が大きいのです。歴史をひもとけば、東京(江戸)が、将軍が居を構える“官都”だったのに対して、経済が栄える“民都”だった大阪では、自由な発想から次々と新しいビジネスが生まれていたし、民間がボランティアや寄付でインフラを整備してきた歴史がある。こうした大阪人の気風や文化を活かせれば2025年の万博も成功に導けるはず。  2020年の東京五輪後、万博が行われる2025年まで猶予期間が与えられたことも大きいが、大阪はインバウンドによる好景気の真っ只中であり、このうえ、開催地の夢洲にIR(統合型リゾート)を呼び込めば経済効果は絶大なものになるでしょうね。  すでに関西圏はインバウンドの恩恵にあずかっており、’17年に関西を訪れた外国人観光客は1207万人。全国の4割に相当し、インバウンド消費額は1兆円を超えている。大阪は2024年にカジノを含むIRの開業を目指しており、今後も注目が集まるのは必至だ。

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/経済産業省 ※『週刊SPA!』11月27日発売号「今週の顔」より
1
2
週刊SPA!12/4号(11/27発売)

表紙の人/ 岡田准一

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!