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「皇族は黙っていろ」と切り捨てた輩が多数いる。その言論は正しいのか/倉山満



 その一つの例外とは、内閣法制局である。法制局は、憲法を頂点とする日本国の法体系のすべてに責任を持つ。当然、憲法解釈の全権を一手に握る。財務省主計局が予算をつけ、国民の代表である国会が承認した法律であっても、法制局が「憲法違反の疑義がある」と述べれば、執行できない。政治家も財務官僚も、法制局の意向に沿うように法律や予算を修正しなければならない。財務省の「他は並びの山」の例外が法制局だ。

 ついでに言うと、安倍晋三が「一強」と威張るのは勝手だ。確かに財務省相手にはファイティングポーズだけはとっている。いくら腰が引けているとはいえ。ところが、法制局には、最初から尻尾を振り、腹を見せて降参している。これは揶揄ではない。嘘だと思うなら、安倍自民党改憲案を見よ。そのなかで、一文字でも法制局の意向に沿わない文字があるか。一文字と言うのは大げさでも何でもない。法制局は、日本国のあらゆる法令の「てにをは」まで監視している。その一文字の誤りで、霞が関の官僚のすべてが畏怖する。

 財務省とて例外ではない、どころではない。これも嘘だと思うならグーグルマップでも見よ。財務省と法制局の建物は、直通の廊下でつながっている。財務省は法制局に因縁をつけられないよう、日常的に行き来できるようにしているのだ。特に財務省の本流である主計局の官僚にとって、法制局を敵に回さないことは出世の条件だ。法制局の承認を得ていることこそ、他の官庁に威張り散らす権力の源泉なのだから。

 安倍晋三も財務省主計局の権力も、法制局の権威の下での話だ。ローマ教皇の下の皇帝や国王の如し。その法制局の権威の源が東大憲法学だ。

 宮沢の「天皇ロボット説」は単なる学説と片付けても良かったが、第四代法制局長官の吉国一郎が政府解釈にした(昭和50年11月20日参議院内閣委員会答弁)。これは国会図書館の検索システムで簡単に議事録を確認できるので、読者諸氏ご自身で調べてほしい。要するに「天皇は社会に向かってモノを言ってはならない」とした。宮沢説を、法制局が─有権解釈─法律的に効力がある政府の解釈にしたのだ。

 こう考えると、消費増税をめぐる安倍首相と財務省の駆け引きすら「ザコの喧嘩」にすぎない。だが、これが日本の権力構造の真の実態だ。

 再び健全な日本国民たる読者諸氏に問う。これがマトモか? 天皇や皇室は本来ならば敗戦の時に全員ギロチンにかけたいが、それも叶わなかったので仕方がないから象徴として残るのは認めてやるが、盲判を捺すロボットでいろ。これが吉国長官以来約45年間、今の安倍内閣に至るまでの政府見解だ。一般の日本国民がそういうことを知らなかったのを責める気はない。しかし、有識者、いやしくも保守を自任する言論人ならばどうだ。

 11月22日、秋篠宮親王殿下が記者会見をされた。マスコミの関心は「お婿さん問題」に集中しているが、どうでもいい。殿下は、かなり踏み込んだ多くの発言をされた。それに対し、「皇族は黙っていろ」と切り捨てた輩が多数いる。

 そいつらの言論は正しいのか?

 私は違うと確信する。如何?

憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。’96年中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員として、’15年まで同大学で日本国憲法を教える。’12年、希望日本研究所所長を務める。同年、コンテンツ配信サービス「倉山塾」を開講、翌年には「チャンネルくらら」を開局し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数
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嘘だらけの日独近現代史

世界大戦に二度も負けたのに、なぜドイツは立ち直れたのか?





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