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定価よりも高い「プレミア価格の腕時計」を買うのはバカなのか?

事例2 デイトナ116520の場合

 2000年に登場した116520は16520の後継モデル。当時は、ロレックスブームと言える時代で、多くの腕時計雑誌が存在しました。当然、この新型デイトナの情報は大々的に伝えられ多くの人が注目していました。そのようなこともあってか、この116520はデビュー当時から注目度が高く、その新品実勢価格は148万円(黒文字盤・税別)といった水準。2000年当時の定価は80万円程度だったため、ずいぶんなプレミアムとなっていました。  しかしこの116520は、2000年に新型としてデビューして以降、徐々に値下がりしてしまいます。2002年頃には特に安くなったものの、第1次安倍内閣が誕生した2007年頃には再度上昇しました。ただ、その2007年でも2000年の実勢価格を超えることはなかったのです(黒文字盤)。

デイトナ116520(黒文字盤)

 また、2008年のリーマン・ショックでは、デイトナの相場がガクッと下落。116520の中古相場はこの時期70万円台程度となり、2000年の新品実勢価格の半額程度になっていたのです。もしもこのとき、116520を持っていた人がこの値下がり状態に驚き「これ以上安くならないうちに売っておこう」と判断したらおそらく数十万円単位の損となったことだと思います。  しかし2019年現在、この116520はどのような中古相場となっているかというと、約170万円以上となっているのです。つまり、これまで最も高かったと思われる2000年の新品実勢価格よりも数十万円単位で高くなっており、買った値段よりも高く売れる可能性がある状況となっています。

事例3 デイトナ116500LNの場合

 2016年に116520からバトンタッチされた116500LNは、これまでのデイトナ史上もっとも高い新品実勢価格となったモデルです。2016年10月時点での新品実勢価格(安い順の3社平均値)は194万9333円(白文字盤)という水準。定価は127万4400円ですから、約67万円も高い「プレミアム」を支払って買うことになったわけです。  先ほどの116520の事例を考えると、新作としてデビューしたときが最も高い可能性もありますから、2016年のプレミア価格は「割高」だと言われても仕方がありません。  

デイトナ116500LN

 しかし、そんな116500LNの白文字盤は、現在中古で250万円以上という水準となっているのです。つまり、2016年10月の「割高」な新品実勢価格より、現在の中古品は50万円以上も高くなっているのです。  16520と116520は、「かつての新品実勢価格より、現在の中古が高い」という状態となっていますが、それは生産終了後に起こった現象だと言えます。それに対して116500LNは、生産されているにもかかわらず、値上がりとなっているのが凄いと言えます。

結局プレミア価格で買ってもいいのか?

 3世代のデイトナ事例を見ると、プレミア価格で買ったとしても、その価格より高くなる事例が多いと言えます。ただ、リーマン・ショック時のように安くなる時期もありますから、高い時期に買って安い時期に売ったならば、もちろん損をすることもあるでしょう。  しかし、売る時期を間違えなければ、これまでの事例では決してそんな損な買い物でなかったということがわかります。つまり、腕時計においてプレミア価格で買うということは、決してバカな買い方ではなく、必ず損をする買い物でもありません。  定価はモノの価値の指針となりますが、最後に価値を決めるのは市場です。つまり、価値とは人が「欲しい」と思う需要と、その供給で決まるため、買いたい人が「価値がある」と判断したならば、プレミア価格でも決して間違いではないと思うのです。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう

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