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履いたブーツを返品してくる20代女性客、要求を呑んだ店長の真意は?

店長の真意とは?

モンスター客 前川さんは、1年半ぐらい前にやってきた30代の女性客を思い出した。外反母趾の症状が進行したため、これから治療をすると言っていた客だった。手術をするか、インソールで調整するかはこれから決めるそうだが、今はまず靴を購入したいということだった。 「後日、返品か交換をしたいとやってきました。その日に購入した靴を履いてみたら、つま先付近の皮が少しよれてしまったとのことで。ぺろんとはがれていましたね。ですが、デザインは気に入っている。だからそのお客の為に、特注で靴を作ってあげたんです」  実はこの靴、製造元は採算が合わないという理由で製造をストップしていた。だが女性客が強く希望していることを知ると、特別に対応してくれることになったのだ。まさに異例の対応だったが、彼女は相当喜んでいたという。だがそれきり、その客は来店しなかったのだ。 「だから、どんなにいいサービスをして、その場で喜んでくれても寄りつかないお客だっている。過剰な誠意を見せるのはどうなのかと思いました」  すると店長がスマホを取り出して操作すると、ある画面を見せてくれた。そこには、外反母趾の女性が購入したあの靴が映っていた。 モンスター客 「女性は外反母趾をテーマにBlogを書いているよ。うちの店で買ったこともね。寄りつく、寄りつかないのは客の自由。でも店にやってこなくても、うちの店の靴が、お客さんに喜ばれているというこがわかると嬉しいね。だから、ひとつのクレーム等で他のお客さんを巻き込んじゃいけないんだ」  たとえ店に来てくれなくても、お客さんが喜ぶことが幸せ。この店長はまさに、接客業の鏡のような人間だろう。 「だから接客は面白いと店長が言っています。彼の言葉がきっかけで、僕もそう思うようになりましたね」  前川さんの店舗では、可能な限りお客の要求を呑むのがスタイル。素晴らしいことだと感じる。だがいい話に水を差すようで悪いが、過剰なサービスが悪質クレーマー増加の原因にならないよう、注意するべきだとは思う。<取材・文/夏目かをる> ― シリーズ・店員が語る困ったモンスター客 ―
コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪
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