だが、そんな大下さんにチャンスが訪れる。ある合コンで奇跡的に女性と意気投合したのだ。 「すごく積極的な女性で、ガンガン大下に話しかけていて。次第に彼も心を開き始めて、LINEを交換していたんです！ あれには腰を抜かすほど驚きましたよ（笑）」 　その数日後、大下さんから「あの子とデートをすることになった」と報告を受けた笹田さん。「ついに大下にも彼女ができる」と喜びかけたのだが、そんなに甘い話ではなかった。 「35年間、一度もデートをしたことがなかったですからね。困ったことがあるたびに、『次、どうしたらいい？』と僕にLINEをしてくるんです（苦笑）。5回くらいきたんじゃないかな？ そのため、デートをしていた女性から『他の女とスマホしているの？』と怒られたと報告されました。まあ、そりゃそうなりますよね…」 　千載一遇のチャンスを逃してしまった大下さん。素直に「デートが初めてで…」と申告しておけば、積極的な女性ならばリードしてくれるようにも感じるが。 「本当にそうなんです。でも、かっこ悪くて言えなかったんでしょう。追及されたときも、素直に『友達に指示を仰いでいた』と言えばよかった。それもダサいと思うのが、大下のプライドの高さであり中年童貞であるゆえんだと感じます。その後、女性にLINEをブロックされたと言っていました」 　この失恋が影響してか、それ以来合コンに参加しなくなった大下さん。 「なぜか突然、ハムスターにハマりだしたんです。しかも『人間の女よりいいわぁ』とか言っていて、僕もドン引きしましたよ。毎日のようにSNSにハムスター画像をアップして、どんどん恋愛から遠のいてしまいました」 　今では「つまらない女が多すぎ。だから日本はダメだよな」などといった勘違い発言をしている大下さん。しかも「だから海外に永住するわ」と宣言してきたというから驚くばかりだ。 「僕も無理に彼女を作れとは言いませんが、このままではあいつがどうなっちゃうのか、不安ではあります」 　一度の失恋で現実逃避をし、殻に閉じこもってしまっているようでは、どこの国に行っても変わらないだろう。＜取材・文／夏目かをる＞コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛＆婚活＆結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆～恋、のような気分で♪」