なぜ介護業界に“中年童貞”が多いのか? 専門家が見た笑えないリアル
異性と性行為経験のない30代男女が1割にのぼると4月、東京大学のチームが発表した。また同調査によると、男性は収入が低いほど童貞率が高いということだ。
「介護業界で働く男は低所得で、中年童貞も多いんです」
ヒデオ(仮名・38歳)は介護業界歴10年。彼が介護職に就いたきっかけは、前職の会社が倒産し、ハローワークでこの仕事を勧められたことだった。当時の年収は260万円。
「介護業界は慢性的な人手不足です。そのためか、定職に就けないような人間が職安に通うと、必ずと言っていいほど『介護の仕事はどうか?』と勧められるそうです。人を選んでいられないのが現実。
その結果、教養がない、学歴が低い(高卒が多い)、自己中、愚痴を言い続ける、精神年齢が低い、弱者(女性や老人)に強い、自分の身なりに無頓着、成功体験がない…などのタイプが多い」(中村氏、以下同)
前出のヒデオもこのタイプ。メタボ体型で髪の毛も薄く、傍から見たらハゲのおじさんだ。親しい知人もなく家族との仲も良くないのか、年末年始も実家に帰ろうともしない。SNSで友達を作ることなく、休日はもっぱらゲームやアニメ。自分の世界しか知らず、世間が狭いのレベルでなく、社会そのものを知らないのだそう。
中村氏の言う社会知らずの性格が災いしてなのか、よく問題を起こしていたというヒデオ。中でも酷かったのは、女性社員との間に起こった事件だ。
「うちの会社(当時の中村氏の介護会社)に16歳の女性社員が入社したんです。女性といえば年配の人が多いこの業界に、とびきり若い子が入ってきたので、男性たちはこぞってワクワクしていました。でも、ヒデオだけは彼女への接し方が違ったんです」
具体的に、他の男性と何が違ったのだろうか。
「ある夏の日の研修中のこと。女性社員に仕事を教えていたヒデオが突然、女性のブラウスの上から、少し透けているブラジャーの紐をつんつんと指で触り始めたんです」
そんなことをしたらダメなことくらい、中学生でもわかりそうなものだ。だがその行動を取るヒデオには悪気といったものが一切感じられず、つんつんを繰り返した。女性がとうとう「やめてください!」と拒否すると、彼は女性に向かって「オレ、そんなことしていない」と恫喝したという。さらに「先輩に向かって、生意気だぞ!」と怒鳴ったのおまけ付き。研修室は騒然となったのは言うまでもない。
「本来なら『セクハラ!』と騒いで、ヒデオが退職に追い込まれるかもしれないのに、被害を受けた彼女は我慢し、それ以上問題を悪化させなかった。偉いです。一方ヒデオはその後、その女性と廊下ですれ違うたびに振り返って『じっと見る』という行為を繰り返していた。彼女のことが好きなのはバレバレで、これはやばいなあ…と危機感を覚えました」
こう話すのは「ルポ中年童貞」(幻冬舎新書)の著者・中村淳彦氏。中村氏は08年~15年まで、介護事業の経営者だった。現在はFacebookの介護グループで2つの管理人(会員がそれぞれ18000人、15000人)を務め、毎日起こるトラブルの解決に奔走している。そんな同氏が提供してくれた事例をもとに、介護業界における中年童貞の事例を再現する。
自分の世界しか知らない中年男
女性社員に惚れるも、正しい接し方が分からない
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