更新日:2023年03月28日 09:09
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「クレイジージャーニー」で話題の二人が熱弁、ブラジル・スラム街の歩き方と暮らし方

「みんな人生にドラマをもっている」

 ファベーラで写真を撮るために暮らしていた伊藤氏だが、「自分の撮りたい場面で撮りたい写真が撮らせてもらえない」と思い、カメラをやめていた時期もあったという。会場では、そんな時に回していたというムービーも上映された。  そこには、スラムで暮らす人々のなにげない日常が映されていた。もちろん、ロケットランチャーが飛び交う激しい銃撃戦や、ドラッグを嗜む様子など、治安の悪さを物語る場面もあった。しかし、その多くは人々が楽しそうに歌やダンスに興じる姿。サッカーの試合があれば、近所の人たちで集まってビールを飲みながら観戦する。 「日本でも小さい頃に町内会とかつながりがあったけど、スラムもコミュニティだからね。そういうのが残っている。それが懐かしくて、居心地がいいと思えた」(伊藤氏)  伊藤氏が“父親のような存在”と話すブラジル人の男性がいる。女性の口説き方から波の乗り方、ギャングとの接し方、リオの裏社会でトラブルに巻き込まれず、いかに楽しむかを教わったという。 「スラムにいる人たちは基本、逞しいというか。みんな人生にドラマをもっているよ。『俺は田舎から出てきて、あそこの林を切り開いたんだ』とか、強い人しか残っていない」(同上) 伊藤大輔 ゴンザレス氏からファベーラの日常を10年間に渡って切り取った写真集のタイトル『ホマンチコ』の意味を問われると、伊藤氏は「ポルトガル語で劇的とかロマンチックなんですが、僕はもともと会社員をかじって辞めているので。ロマンを求めていたんだと思います。日本で感情むき出しになったり、大声を出したりすることなんてないじゃないですか。海外で撮っていると、相手も本気で怒って瓶とか投げてくる。それに対して僕も怒ったり。それが心地よい部分もあったんです」と答えた。
ホマンチコ

写真集『ホマンチコ』より

 スラムと聞けば、危ないイメージばかりが先行するかもしれないが、そこには人々にとって当たり前の日常があり、人間ドラマがあることを実感した次第である。<取材・文・撮影/藤山六輝> 
ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo
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ROMÂNTICO
「クレイジージャーニー」出演で大反響。 リオのファベーラに10年住み、そこに暮らす人々のリアルな日常を切り取る写真家・伊藤大輔初作品集。ブックデザインはMATCH and Companyの町口景が手がける。


GONZALES IN NEW YORK
「クレイジージャーニー」で人気のジャーナリストが見た、“憧れの街"の裏側。多くの人種や職業の人が集まり、巨大な経済圏になっていれば、想像できる種類の犯罪や社会問題は必ずある。売春はあるし、ドラッグも頻繁に売買されている。マフィアもいるし、ギャングもいる。超セレブの家の近所に餓死寸前の貧乏人やホームレスがいたりする。おびただしい量のカオスを内包した巨大都市なのだ。


世界の危険思想 悪いやつらの頭の中
人が人を殺す理由は何なのか――。著者は世界中の危険地帯の取材を続ける中で、日本人の常識とは相容れない考え方に出会ってきた。仕事だから作業のように人を殺す、金持ちからは奪ってもよい、縄張りに入った奴はすべて排除する。そんな、教科書には決して載らない「危険思想」を体を張って体系化。

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