顔なじみの常連客が罪を白状するまで

皆さんにも通っているコンビニがあると思う。顔なじみになれば信頼関係が生まれる。スタッフも常連客の場合は安心するわけだが、ショックな出来事が起こった。
週に何回か22時過ぎに会社帰りにやってくる30歳ぐらいのサラリーマンがいた。愛想がいいし、いつも弁当などを買っていく。この日は大盛のたらこスパゲティで、温めて渡した。その30分後、奥にいた店長が言う。
「あいつやりやがった」
最初は誰のことだが全く分からなかった。店長が「浜さんも絶対に知っている男で、さっきパスタ買ったよ」と話すが、筆者は信じられなかった。
「本当ですか?」
「雑誌を盗んでいったよ。人は全く見かけによらないんだよ」
証拠のビデオと写真を撮り、すぐに捕まえられると思って警察には伝えなかった。その数日後、22時を少し過ぎた頃にその男はやってきて、また大盛たらこスパゲティを購入し「温めて下さい」と筆者に言うや否や、後方から店長が「すいませんが、ちょっと奥の部屋に来てもらえますか?」と駆け寄った。
男は抵抗することもなく中に入った。店長が事情を説明しても最初はとぼけていて、ビデオを見せても「それは僕ではないです」と突っぱねた。そこで店長が語気を強めて言う。
「あのね、証拠はあるんだよ。これはあなたでしょ。もし、正直に言えば警察に言わないし、会社にも内緒にしておく。商品の代金を支払うだけでいいけど、あなたが白状しないのなら警察を呼ぶよ」
すると男は「本当に警察に通報しないのですか?」と表情を変える。
「正直に白状するならね」
男は罪を認め、それ以前にもジュースを盗んだことを白状した。仕事上のストレスからついついやってしまったようだ。店長は免許証を預かり、翌日、男は盗んだ商品の代金を支払い、謝罪をした。もちろん、それから店に来ることは二度となかった。