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不穏な現代社会を鋭く軽快にブッタ斬るダークコメディ『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』

『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』

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不穏な現代社会を鋭く軽快にブッタ斬る

 ラウドロックなイビキに定評があったのに扁桃腺の手術をした途端それがなくなり「静かすぎて死んでると思った」と言われた男、ワンメディアの明石ガクトだ。今日は真面目に僕が最近思うことについて話をさせてくれ……ってコイツは急にどうしちゃったの? と思ったSPA!読者の皆さん、ちょっと待って。今、世の中は静かに狂ってると思わないか?  例えば最近、宅配されたピザにサラミを使って「デブ」という文字が書かれていたと告発する写真がSNSにアップされ炎上、いくつかのニュースサイトに取り上げられていた。読者の皆さんはアレを見てどう思った? 僕には「デブ」という文字には見えなかった。実は、サイトによっては写真を修正していたらしい……。

 さて、いまの話は真っ赤な嘘で現実にはそんな事件は起きていない。僕はこの内容をツイートしたが4万人近くいるフォロワーの中で、この話が嘘であると指摘した人間は一人もいなかった。  この実験は僕が最も敬愛するアジズ・アンサリの復帰作『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』からインスパイアされたものだ。#MeTooで告発され活動休止していた稀代のスタンダップコメディアン。ステージに立ち向かう落ち着かない背中と震える声を映像化したのは、なんとあのスパイク・ジョーンズだ。  僕らの社会は今、一度でも過ちを犯した人間に対して不寛容すぎやしないだろうか? にもかかわらず、タイムラインに流れる嘘を嘘であると見抜けない人が溢れるSNSの世界は、著名人にとって地雷原の中を歩かされるようなもの。15分でいい、アジズの話に耳を貸すべきだ。 ●『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』 コメディアンのアジズ・アンサリがアメリカの人種差別やジェンダー問題を話題に現代社会を軽妙に茶化す。Netflixで配信中
’82年、静岡県生まれ。上智大学卒。’14年、ONE MEDIAを創業。近著に『動画の世紀 The STORY MAKERS』(NewsPicks Select)がある

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