更新日:2021年03月21日 11:41
ライフ

“防大名物”卒業式の「帽子投げ」の後に行われる大事なこと

防衛大学校では「クラブ活動」も任務の一環として行われる

 そのほか、放課後は校友会(いわゆるクラブ活動)があります。これも、何らかの体育会系の校友会に所属し活動をすることが任務となっています。授業終了後は必ず校友会活動を行い、体力と各種技能の向上に努めています。これも職務ですから、帰宅部がいいとクラブ活動をやらない自由はありません。そのほか、春季、夏季、秋季に定期訓練があります。学年によって行うことはさまざまですが、2週間程度、防衛大学校内、あるいは各陸海空の自衛隊基地・駐屯地に行き、自衛隊員としての訓練を受けます。その内容は、一般の自衛官と変わらない内容です。  防衛大学校の学生は学業・訓練以外でも多くの制約を受けます。防衛大学校は全寮制で敷地内にある学生舎で生活をします。月曜から金曜まで外出は認められていません。土曜、日曜も外出可能時間が定められています。また、休日であっても防衛大学校から100km以上離れることは認められていません。上級生になれば、休日であれば長距離移動や外泊の許可を取ることができますが、1年生の間は基本的には認められません。連休だからといって、家族や地元の友人のもとに帰ることはできないのです。  このような制約に縛られながら生活し、学業に励み、訓練を積み続けるのが防衛大学校の学生です。その実態は、とても「月10万をもらえるから」という理由だけで、できるものではありません。防衛大学校を「タダで行ける大学」という感覚で捉えるのは間違いだとわかっていただけるかと思います。

卒業式の「帽子投げ」後に行われる自衛官への任命式

 4年間、防衛大学校で研鑽を積み、学業・訓練において一定の成果を出した者が、晴れて卒業証書を授与されます。テレビの報道番組などでたびたび流されますが、防衛大学校の卒業式では、卒業生が高々と帽子を放り投げて講堂から駆け出していきます。テレビではこの場面しか映らないため、ほとんどの方が知りませんが、この後続きがあります。
自衛隊宮城地方協力本部@公式ですよ☆

「自衛隊宮城地方協力本部@公式ですよ☆」Twitterより

 卒業式が終わった学生は防衛大学校の制服を脱ぎ、それぞれ配属される陸海空自衛隊の制服に着替え、再び整列します。防衛大学校学生を終え、武装して戦闘に従事する要員である「自衛官」としての任命を内閣総理大臣から受ける「自衛官任命式」が行われます。TwitterやYouTubeで自衛官任命式の様子は公開されていますので、是非、見てみてください。防衛大学校を選んだ若い学生たちの背負ったものの重責を理解いただけるのではないかと思います。

 任務の遂行にあたり「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務める」と誓うのは、我が身よりも国家・国民を守ることを優先することです。これは我が国において自衛官だけです。厳しい防衛大学校を経て幹部自衛官となった友人たちはそんな厳しい学生生活を面白おかしく語ってくれます。防衛大学校は厳しい学業と訓練の場ですが、それだからこそ生涯の記憶に残る「絆」となる場所です。  「防衛大学校」はタダの大学などではないことを理解した上でその崇高な「命」を受けて学業や訓練に励む防衛大学校の学生を応援したいと思います。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ