日本シリーズ、屈辱の4連敗の歴史。今期惨敗だった巨人は過去にも…
プロ野球日本シリーズは福岡ソフトバンクホークスが巨人を降し、3連覇を達成した。対戦成績は鮮やかな4勝0敗、全ての試合内容でも常に優位に立つ展開が繰り広げられ、その強さが印象付けられたシリーズとなった。一方の巨人は主軸の不振などが響いての4連敗、セ・リーグ覇者としての意地を感じさせることも出来ず、力なく敗れ去った。
史上初めて、ストレートでの4連敗で敗れたのは1959年のシリーズを戦った巨人だった。前年、西鉄ライオンズを相手に「3連勝からの4連敗」という劇的なまでの敗北を受け、雪辱を果たすべくこの年もシリーズに挑むも、南海ホークスの前に更なる屈辱を味わうこととなる。巨人・水原監督と南海・鶴岡監督という名将同士の決戦は同カード5度目(当時)の対戦でもあり、初めて南海が宿敵・巨人を降したシリーズでもあった。
巨人は前年に川上哲治が引退、入団2年目の長嶋茂雄が新たな主軸としてセ・リーグ4連覇を成し遂げたものの、南海の杉浦忠、野村克也のバッテリーの前に敗れた。杉浦忠は4連投(1・3・4戦は先発、2戦目はリリーフ)での4勝、その記録は伝説として今なお語り継がれている。また、巨人のエース・藤田元司も初戦以外の3試合で先発マウンドに立っており、現代では考えられない、両軍ともまさに時代を感じさせる投手起用がみられた。
シリーズ出場6度目となる阪急に対し、この年、球団史上初めてセ・リーグを制した広島カープが挑む構図となった戦いは、シリーズ常連となった阪急が貫禄十分な戦いを繰り広げた。
古葉竹識監督が率いる広島は初戦と第4戦を引き分けたものの、初勝利はならなかった。阪急はコーチ時代からシリーズを戦ってきている指揮官・上田利治、主力の山田久、足立光弘、福本豊、長池徳士等、パリーグを代表する猛者が顔を揃えており、このシリーズでは広島の挑戦を一蹴、念願の日本一に登り詰めた。
1960~70年代、V9を達成した巨人に対し幾度となく立ち向かっていった阪急が実力と経験の差を広島に見せつけ、この年以降、連覇を成し遂げるその一歩を力強く刻むこととなる。広島は山本浩二、衣笠幸雄ら主軸が本塁打を放つも、初のシリーズで勝利へと導くことは出来なかった。
「野球観が変わった」
多くのファンは、敗れた巨人選手のそのコメントが強く印象に残っているのではないだろうか。
この年の日本シリーズは0勝4敗という数字以上にショッキングな試合展開が続いた。
開幕戦となった東京ドームでの初戦、シリーズを象徴するかのような強烈な一発が西武・デストラーデのバットから放たれた。巨人先発・槙原寛己のストレートをライトスタンドに叩き込んだこの本塁打で3点を失うと、打線も渡辺久信の前に完封負け。2戦目は20勝投手・斎藤雅樹が打ち込まれ、3戦目はシリーズ初登板の西武・渡辺智男に完封を許す。4戦目は初めて先制するも、中盤で大量点を奪われると、追いつくことができずに敗北、屈辱の4連敗を喫した。
投打で圧倒されたことはもちろん、平凡な外野フライを落球、勝負所での牽制死など、独走で優勝したシーズン中には見られなかったボーンヘッドなども目立った。何より、終始プレーから自信が感じられず、まさに「蛇に睨まれた蛙」のような戦いぶりだった。
冒頭のコメントを発したのは巨人内野手の岡崎郁。最終戦後のセレモニー、敢闘賞として表彰された際、敗れた悔しさからの涙を隠そうとはしなかった。
一年間の総決算でもある日本シリーズ。シーズンの掉尾を飾る「頂上決戦」での4連勝、そして4連敗は強烈なまでにファンの脳裏に刻まれる。
驚異の4連投で宿敵を撃破 1959年 南海対巨人
鯉の挑戦を跳ね除け、黄金期に 1975年 阪急ブレーブス対広島カープ
完膚なきまでに敗れた球界の盟主 1990年 西武対巨人
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