更新日:2023年04月27日 10:26
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子供部屋おじさんの秘密を知った僕らは、また余計なことをして――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第68話>

ミミズでちんこを腫れさせるよりも、魅力的なおっさんを見つけた僕ら

「ミミズを探しているんです」 「なんで?」  当たり前の答えが返ってきた。 「ちんこを腫れさせたいんです」 「なんで?」  そこまで言われて気が付いた。僕たちはなぜちんこを腫れさせたかったのだろうか。なんでそんなことをしたかったのだろうか。分からない。もしかして僕らはバカなんじゃないだろうか、本気でそう思った。 「上がってこいよ。向こう側に門があるからそこから入れ。玄関空いてるし」  おじさんはそう言って顎で北側を指示した。よく分からないが、上がってこいということらしい。 「もう漏れる、ダメだ!」 「だしちゃえだしちゃえ!」 「この紐をミミズだと思っておしっこかけたらどう!?」 「あっあっあっあっあ~~!」  遠くから友人たちの声が聞こえた。あいつら何やってんだ。なんでチンコ腫れたいんだ。バカなんじゃないだろうか。  錆び付いた門を抜けると荒れ放題の庭があって、その先に曇りガラスの引き戸があった。おそるおそるその戸を開けるとまた声が響いた。 「上がってこいよ」  言われるままに上がり、それぞれの段を守護するかのごとく各々の段に置かれている木彫りの像を眺めながら階段をのぼる。そこには子供部屋があった。当時はそう思わなかったけど、いま思うとあれは確実に子供部屋だったように思う。  部屋には使い古された学習机があり、棚にはガンダムのプラモデルが並んでいた。本棚には漫画がズラリと並んでいた。ファミコンもディスクシステムまであったような気がする。その部屋の中央におじさんがいた。 「ミミズを掘ってるくらいなら暇なんだろう、まあ、いつでも遊びに来ていいよ」  おじさんは乏しい感じの表情で抑揚なくそう言った。完全に働いていない感じで、親の顔で道楽に熱中している感じで、完全に今でいうところの“子供部屋おじさん”だったのだけど、僕には神のように思えた。  すぐに友人を呼びに行った。おしっこを漏らしてしまいパンツを替えにいったやつ以外がそのまま子供部屋おじさんの家にあがりこんで遊ぶことになった。
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楽園から通じていた謎の小部屋
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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