更新日:2023年04月27日 10:26
ライフ

子供部屋おじさんの秘密を知った僕らは、また余計なことをして――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第68話>

おじさんの秘密の部屋にあったものは……

「やっぱやめておこうよ」  もう一度、友人に忠告した。場合によっては力づくでも阻止するつもりだった。拳に力を込めた。  僕の決意をよそに、友人はニヤリと笑った。 「でも、エッチな本とかあるかもしれないぞ。これだけ隠すということはそういうことだと思う」  僕は小さく頷いた。 「バレないようにこっそり開けてみよう」  僕たちはいつの間にか握手をしていた。やはりエッチな本とかにむちゃくちゃ興味があるお年頃だったのだ。これには抗えるわけがない。  ドアには鍵などかかっておらず、ドアノブを回して力を込めるとゆっくりと開いた。この先にどんなエロ本が待ち受けているのか、期待で胸が張り裂けそうだった。 「わあ!」  そこにエロ本はなかった。  ただ、そこには部屋いっぱいのジオラマがあった。  部屋は予想以上に広く、6畳くらいあった。その8割以上を占拠するように台が置かれ、そこに鉄道模型が組まれていた。それを彩るように山や川や木や家の模型が組まれていて、ものすごくリアルな街並みが再現されていた。はっきりいって圧巻だった。 「これってこの街の模型なのかな」  そのジオラマはどこかで見たような街だった。おそらくではあるが、おじさんは自分が住むこの街を再現したのではないだろうか。どれだけの手間と時間と金をかければこれができあがるのか分からない。とにかくすごいものだってことだけは分かった。 「エロ本ねえじゃん」  友人はこの模型の凄まじさが分からないようで、エロ本のことばかり気になっている様子だった。 「いや、これはすごいでしょ。すごいなあ。大人になったらこういうの作れるようになるのかな」 「あ、エロ本あった」  僕の言葉など耳に届かない様子で、友人はエロ本を探し続けていた。そして見つけた。
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わかっていたんだ、でも引くことはできなかった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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