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人がゴミだと思うものにだって、価値がある――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第80話>

誰の仕業か、昨日と同じ場所に置かれていた新たなエロ本

 次の日だった。 「またエロ本だ」  またもやエロ本を発見したのだけど、不思議なことに、それは昨日と全く同じ場所に置かれていた。 「昨日の今日で同じ場所にエロ本が捨てられるだろうか?」  不思議に思ったけれども、エロ本はエロ本だ。表紙はセーラー服を着たおばさんで、またなんか悲しいものだった。殺風景な空き地の風景と相まって妙に寂しかったのを今でも覚えている。  全然ダメだったけど「せっかくだし」と何がせっかくなのかよく分からないセリフを吐いて仏壇の蔵書に加えた。  それから3日後くらいだったと思う。友人の習い事などがあって空き地に行かない日が続いたが、3日ぶりにいくと、そこにはやはり同じ場所にエロ本があった。今度は下着にフォーカスしたものだった。  これは絶対に誰かが置いているだろう。  そう確信した。この雑草たちのようにエロ本が自生している可能性も考えたが、まあそれはありえない。たぶん誰かが置いている。  なんだか気持ち悪いし、怖い、とにかく不気味だ。そう思ったけどエロ本を見たい気持ちが勝った。ただ、下着にフォーカスしたエロ本を置かれても困る。あまり興味がないからだ。  まあ、せっかくだし蔵書には加えるが、できれば本当に王道的なスタンダードなエロ本が欲しい。考え抜いた僕たちは、このエロ本をおいている何者かに手紙を書くことにした。 「もっと普通なのがいいです」  みたいなことを書いて、いつもエロ本がある場所に置いた。風で飛ばないように石を重しにした。  数日して行ってみると、手紙は回収されていて、エロ本が置かれていた。完全に誰かが意図的にエロ本をおいていることが確定した瞬間だった。  僕らはその何者かを、当時の漫画に登場するキャラになぞらえて「キテレツ斎さま」と呼ぶことにした。キテレツ斎さまは、キテレツ大百科という漫画に登場するキャラクターで、主人公の遠い先祖だ。その先祖が残してくれたキテレツ大百科をもとに主人公が珍妙な発明をしていく物語だ。  キテレツ斎さまが残したキテレツ大百科、誰かが残すエロ本、それが繋がった瞬間だった。
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キテレツ斎さまの存在が知れ渡る頃になると……
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