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“20年間無職”の子供部屋おじさん、家族の切実な思い

 中高年のニートや引きこもりが社会問題となって久しい。昨年頃からは「子供部屋おじさん」というキーワードまで誕生。それは、おじさんになっても実家から出ず、子供部屋に住み続けている人を指す。ネットでは嘲笑の対象として使われている言葉だが、筆者のまわりにも意外と多く存在している。

約20年無職、大学中退から「子供部屋おじさん」になるまで

おじさん

中年になっても実家の子供部屋に住み続ける「子供部屋おじさん」(※写真はイメージです。以下同)

 都内の一戸建てに住む会社員の高橋さん(仮名・46歳)には中年ニートの弟がいる。高橋さんは3兄弟で、次男は会社員で現在ひとり暮らし。長男の高橋さんと三男で無職のユウさん(仮名・41歳)が実家で80歳近くの両親と同居している。  筆者がユウさんについてたずねると、高橋さんは堰を切ったように語り始めた。 「ユウは小さい頃は活発でした。しかし、中学生ぐらいから少し変わり始めた気がします。無口で自分からは話さない。こちらから話しかけても小さな声でボソボソと返す程度。  ただ、特に問題があったわけではなく、数学が得意で成績は良かった。大学にも現役で合格し、ゼミの教授から母親に『すごく優秀で良い生徒です。お母さんはどうやって育てられたのですか?』と電話が入ったこともあります」(高橋さん、以下同)  そんな真面目で優秀な青年に異変が起きる。 「大学2年生の時に突然、学校に行かなくなり、結局辞めてしまいました。両親とも話しましたが、本当の理由は今でもよくわかりません」  ユウさんは無口なため、家族でも本心が見えないのだと言う。  とはいえ、彼はいきなりニートになったわけではない。大学を辞めたユウさんは、ボランティア活動を始めた。バングラデシュまで行き、現地では井戸を掘るなど、当時は生き生きとした表情だったという。本人としては有意義な体験だったのだろう。

海外ボランティアから帰国後、完全に塞ぎ込む

バングラデシュ

バングラデシュのダッカ(写真/藤山ムツキ)

 しばらくしてから、2回目に訪れたバングラデシュで“何か”が起きたらしい。 「すごく精神的にショックな出来事があったようです。帰国後、ほとんど人との接触を避けるようになりました。ただ、それに関しても決して口を割らない。本当は、その後に専門学校に入る予定だったのですが、行きませんでした。そして、アルバイトもせず、そのまま引きこもりとなってしまったのです。  たしか、ユウが23歳の時ですかね。その頃は生きていた祖父もひどく心配していました。祖父はユウに買い物を頼み、そのお駄賃として小遣いをあげているようでした」  家族は困り果てていた。高橋さんも長男として責任を感じ、何度もユウさんの部屋まで足を運んで声をかけた。 「ユウは絵を描いたり写真を撮ったりするのが上手いので、芸術系の仕事を目指したらどうか、ギターを弾いているのでバンドでも組んでみたらどうか……など、いろいろと話しかけていました。それでも何も変化はありません。私が怒鳴っても、とくに言い返すこともなく、ただ聞いているだけ。反応がないのが寂しいですね。なんでこうなったのかな」
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年月は過ぎ、両親は高齢に…
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