更新日:2023年08月21日 15:06
仕事

“20年間無職”の子供部屋おじさん、家族の切実な思い

年月は過ぎ、両親は高齢に…

老人 そのまま年月だけが過ぎていった。41歳になったユウさんの髪は薄くなり、両親も80歳近くになった。昔は週に1度は外で友人と会っていたようだが、それもなくなった。親戚の集まりでは料理を手伝っているが、だれもが腫れ物にでも触るような雰囲気だ。  両親は「将来、私たちが死んだらどうするんだ?」と常に頭を抱えている。自分で稼ぐ意思はないらしい。バイトぐらいはしてほしいと願っている。  たまらないのは長男である高橋さんだ。朝早くから働き、夜遅くに帰ってくると、ニートの弟がいる。いつまでこんな状態でいるつもりなのか……。 「何度も厳しく言いましたが、無理でした。最近は頭にきて仕方がない。障害をもっているわけではなく、料理もつくれるし、車の運転もできる。働く意欲がないことだけが納得いかない。いまは人手不足の業界もあるから、やる気があれば採用される可能性は高い。  もしもアルバイトでも面接に20回行ったけど落ちたとかなら、努力しているわけだから兄弟として助けてあげようと思える。それを怠っているわけだから、もうこんなヤツと生活するのは嫌です。私は家を出てひとり暮らしをします」  とはいえ、年老いた両親を残したままで心配にはならないのだろうか。だが、「とにかく一度、2~3年は家を出てみたい」と意志は固い。  近い将来、両親が亡くなってしまった時に、高橋さんとユウさんは相続された家でふたり暮らしすることになる。その後は、自分が面倒を見続けなければならないことを考えると、ツラくて仕方がないのだ。せめて、それまでは……ということだろう。 「現在のユウの生活は、たまに買い物を頼まれて行くぐらいですね。テレビは見ない、携帯電話も持っていない。パソコンはあるが、ゲームもやらない。時おり、ギターの音がする程度ですね」  高橋さんは口をつぐんだ。その表情は暗かった。将来が心配でならない。<取材・文/浜カツトシ>
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