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星野源に便乗した安倍首相、炎上の根にある“文化レベルが低い首相”問題

本や音楽のリストを毎年公開するオバマ前大統領

 もし、安倍総理がポップスターを“政治利用”したかったのであれば、それなりの下地が必要だったのである。  たとえば、毎年読んだ本や聴いている音楽のリストを公開しているオバマ前大統領(58)を見てみよう。2016年のプレイリストは、「Good Vibrations」(ビーチボーイズ)や「Rock Steady」(アレサ・フランクリン)などのオールディーズから、「Tightrope」(ジャネール・モネイ)や「Many the Miles」(サラ・バレリス)などのコンテンポラリーに至るまでカバーしている。大統領退任後の昨年も、「Hello Sunshine」(ブルース・スプリングスティーン)、「Change」(メイヴィス・ステイプルズ)などの大御所はもちろん、「Burning」(マギー・ロジャース)、「Juice」(リゾ)などの若手もチェックするあたり、抜かりはない。
 読書リストも、「白鯨」(ハーマン・メルヴィル)や「グレート・ギャツビー」(F・スコット・フィッツジェラルド)などの名作もおさえつつ、「Brown Girl Dreaming」(ジャクリーン・ウッドソン)やハリーポッターシリーズもリストに加えるなど、子どもの読書習慣にまで配慮したピックアップになっている。

ポップスターに乗っかるには素養が必要

 もちろん、いい音楽や本を知っているからといって、優れた政治家であるという保証はない。オバマ氏のリストだって、もしかしたら優秀なブレーンによるイメージ戦略として作成された可能性も否定はできない。  しかし、世の中のトレンドに敏感であることは、政治家の条件のひとつであるのも確かだ。そして、自らをそのようにセルフプロデュースすることも、現代の政治家には欠かせない能力である。  いずれにせよ、それなりの質量をともなった文化的な共通理解があって、はじめてポップスターに乗っかってもいいという世論が形成されるのであって、その点で、安倍総理には素養が著しく欠けていたと言わざるを得ない。  今回、安倍総理に向けられた“嫌悪感”が、権力への批判ではなく、人柄への軽蔑であったことに、政治の空白を痛感させられるのである。 <文/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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