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転売ヤーではないのに…マスク販売で評判を落とした“善意”の人々

客より先にテレビの取材クルーがきた

マスク 東京都内の菓子店経営・周防敏明さん(仮名・30代)も、全く同じような目にあった一人。 「ゴールデンウィーク前ですよ、電話があって『マスクを卸す』と言われたの。全く知らない会社だったけど、すぐにサンプルを営業の方が持ってきて……」(周防さん、以下同)  営業の男は周防さんの前にマスクを差し出し、「1箱50枚4000円」で卸すと言ってきた。マスクは確かに貴重品だが、やはり高いと感じて躊躇していると、今は5000円でも安いと、ネット上のショッピングサイトを見せつけられたという。 「4000円で仕入れて500円でも儲けられたらいいでしょ? コロナでお店にお客も来ないしね……」  資金繰りは苦しかったが、「お試しに」と20箱を、若干値引きしてもらい7万8000円で購入。翌日には届いたマスクを店頭に並べて売り出した。すると……。 「客より先に、テレビ局が取材に来ました。どこから買ったのか、買い占めていたのかとしつこく聞かれて、店頭を勝手に映されて放送されました。商店街や同業仲間から『テレビを見たぞ』とか『転売してるのか』と問い合わせもたくさんきて参りました。ほんの少し儲けられればいいと思ったのは事実ですが、卸業者から買ったものを販売するのは転売でもないし、法外な儲けを狙ってもいない。結局、マスクはお客さんに配ったりして儲けはほぼナシです」  そもそもマスクの一大産地は中国と言われており、コロナ騒動の影響で輸出をほぼストップさせていた。3月の終わり頃から中国国内にはマスクが余りまくっていたという話もあり、現在は輸出解禁とともに大量のマスクが日本に入ってきたのである。  そのわずかなタイムラグの間に、客や近隣住人のため、お世話になっている人のためにと割高なマスクをつかまされた人々は、小銭だけでなく、信用も失ってしまったのだから、あまりに気の毒というほかない。<取材・文/森原ドンタコス>
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