更新日:2020年05月28日 16:15
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完全解除は7月?「小池都知事のロードマップ」に批判の声

豊洲汚染の不安を主張した’16年都知事選との共通点

「都は独自にPCRセンターをつくるなど、評価できる取り組みもあります。しかし、感染第1波の段階で十分に検査数を増やせなかったという点で、対応は遅きに失したと言わざるをえません。新規陽性者数などを自粛緩和の判断基準としていますが、十分な検査数がないとその判断基準の有効性が検証できないからです。  むしろ、限られた検査数ならば、指標に合わせて数字がつくられてしまう危険性がある。実際、厚労省は検査数のキャパシティに合わせて『37.5℃以上の発熱が4日以上続いた場合』という検査基準をつくりましたが、発熱前のほうが伝染しやすいとわかり、その基準を削除しています。  検査数を増減させることで、都の段階的解除を早めたり、遅らせたりすることもできてしまう可能性があるわけです。都は第2波に備えて一日1万件を目標に検査体制を整えるとロードマップに盛り込んでいますが、何かと比較されるニューヨーク州はすでに2万件の検査が可能で今後4万件に倍増する計画。この差は非常に大きい」(医療ガバナンス研究所・上昌広理事長)  なぜ、こうも批判渦巻くロードマップになったのか? 音喜多氏は選挙対策としての一面を指摘する。 「専門家が問題ないと言っていたのに、『土壌汚染対策に不安が残る』と築地市場の豊洲移転中止を主張して’16年の都知事選を戦った小池さんとダブるんです。不安を煽って注目を集めた結果、都知事選後に移転延期を決定。  その後、移転時期や築地跡地の活用法を巡って紛糾したのはご存じのとおり。今回も7月5日に控える都知事選(6月18日告示)に向けて都民の安全・安心をアピールするため、過度に保守的なロードマップを作成した可能性は否めません」  自粛解除を早めて感染者数が増加に転じれば、選挙に支障をきたすという配慮もあるだろう。だが首都・東京の動向は日本経済に影響を及ぼす。経済評論家の加谷珪一氏が話す。 「東京都のGDPは100兆円にのぼり、日本全体の20%を占めます。2週間単位で段階的解除を進めるという判断の遅さは、日本経済の足を引っ張りかねません。ステップ1~3で細かく自粛要請を解除する業態を分けているのもマイナス材料。消費者は細かく見ません。どんな業態のお店がいつ営業再開するのかわかりにくいわけです。  わからなければ外出しようという意識は働かず、消費マインドが改善しません。ステップ2に移行できなければ生活必需品以外を扱う小売店の自粛要請が解除されなかったり、飲食店の営業時間が夜10時までに制限されたりと、事業者数が非常に多い外食、サービス、小売業に対する縛りがキツいのも問題。卸売業など、幅広い業種に自粛・休業の影響が波及するからです。  法人企業統計の借入金などを見ると、資本金1000万円以下の中小企業は平均2か月でキャシュが尽きることがわかるので、完全自粛解除が遅れるようなら、かなりの数の中小企業が破綻すると予想しています」  過度の自粛要請でかえって人気に陰りが出て……“百合子アラート”が灯らないことを祈りたい。

神奈川は2ステップ。異なる解除のロードマップ

 神奈川県は22日に「神奈川ビジョン」を公表。緊急事態宣言解除後のステップ1では飲食店に午後10時までの営業を要請するが、ステップ2では時短営業やイベント自粛要請を解除するなど、東京と比較してステップを簡略化。一方、埼玉県は自粛解除の目安に「東京の感染者数が週100人以下」など独自の指標を定め、段階的に自粛解除する予定。 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社> ※週刊SPA!5月26日発売号より
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週刊SPA!6/2号(5/26発売)

表紙の人/ 堀田 茜

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