コロナ禍でくすぶる自粛警察のトラウマ。「近所の公園に行けなくなった」人も
新型コロナウイルスの感染状況が随分と落ち着き始めている。マスク着用の指針についても、厚労省は「屋外においては距離が確保できればマスクの必要はない」とも発表した。そのためか、街ゆく人の中にはノーマスクで歩く人もチラホラ。サッカー、Jリーグでは声出し応援の実証実験も行われ、夜の街では酔客が千鳥足で歩く姿も珍しくなくなった。
こうした“解禁”について、ほとんどの人は「ようやく……」と安堵の声を漏らすだろう。だが、一方ではコロナ禍の過剰な規制を辞められずに頭を抱えている人がいるのも事実である。
東京都在住の川田智子さん(仮名・42歳)は「完全にマスクが解禁されるまでは、はずせない……」という。コロナ禍が始まった2020年の春先、ちょうど緊急事態宣言が初めて出された時のことを苦々しい顔で語ってくれた。
「緊急事態宣言で私も夫もリモート中心になったのですが、ある日、どうしても出社しなければならなくなったんです。ちょうど時期的に花粉症の季節で、久しぶりに外に出たら鼻はムズムズして喉も軽くイガイガ。どうにも耐えられなくてなったので、マスクをずらして鼻をハンカチで押さえたんです。
乗っていた電車はガラガラでほとんど人がいなかったので、このくらいはいいかなって思ったら、ちょっと離れたところにいた年配の男性がすごい勢いで走って来て、大声で『マスク! マスク! マスク外すな! 気をつけろ!』って怒鳴ってきたんです」
ガラガラの車内だったため男性の声は響き渡り、乗っていた数人の客も皆たじろいでしまったという。
「すごい剣幕で怒ってきて、私もビックリして『すいません』って謝ったんですが、私の前に立って、ずっとブツブツ言われて……。ものすごく怖かったですね。誰も見て見ぬ振りだし、もし何かされたらと思うと怖くて体がギュッと堅くなりました」
この一件以来、この川田さんはどんなことがあっても人前でマスクを取ることはなくなったという。それだけでなく、電車に乗ることにも抵抗を覚えるようになってしまった。
「友人と食事に行っても、食事している時以外はずっとマスクしています。みんなからは『気にしすぎだよ〜』って言われますが、もう、トラウマですよね。ずっと誰かに見られてるんじゃないかって。
電車に乗る時は特に感じますね。だから、電車に一人で乗ることが億劫になりました。コロナで会社もリモートになって、ほとんど出社しなくていいのが幸いしてるんですが、それでもたまの出社は気が重いですね」
そのため、川田さんは新たに自転車を購入し、自転車で出社して「けっこうイイ運動になってます」と。災い転じて……と言えば聞こえはいいが、川田さんが受けた心の傷はそうそう癒えるものではない。
マスク警察からの罵声がトラウマになった女性
人前でマスクを外せないようになった
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター
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