ダイヤモンド・プリンセス号で対応。自衛隊中央病院が残した貴重なデータ
特に、新型コロナウイルスに対しては、防護具や人工呼吸器などさまざまなものが必要です。生命の危機にある患者さんを救う技術や能力の高い医療関係者はたくさんいますから、もちろん全力で対処してくれるでしょう。でも、そこで頑張れば頑張るだけ防衛予算に大きな赤字が出るとなると、「なに? その罰ゲーム」って感じです。
自衛隊病院が診療した診療報酬って国庫が吸い上げないとダメなんですか? そのお金で自衛隊病院がその設備を拡充し、医薬品を増やし、防護具を充実させるために使えれば、もっとたくさんの患者さんを救えるのではないでしょうか。
「自衛隊病院が報酬を受け取るのは馴染まない」と言う人もいるかと思いますが、馴染まないなら馴染むように制度を変えるのが政治の役割です。自衛隊病院は今回の新型コロナウイルス対処では先頭に立って戦ってくれています。普通に考えて、その病院をケチケチさせたらダメでしょ。
この新型コロナウイルスとの持久戦は、ワクチンと特効薬ができるまで続きます。自衛隊病院はアビガンをはじめとするさまざまな「この病気に有効かもしれない薬」の治験を行い、データを集積してくれています。この病気への対処のために国を挙げて必要な資金を出すのなら、自衛隊病院の診療報酬を国庫に吸い上げるのをやめてください。
あ、財務省は「報酬を受け取るなら、その分だけ防衛予算から削る」などと言い出すでしょうから先に言っておきますが、防衛予算を削ったりしては絶対にダメですよ。そのうえで、診療報酬は自衛隊病院が直接受け取ることができるようにしてくださいということです。ぜひ、ご検討ください。
今回、新型コロナウイルスに先頭をきって対処したのは自衛隊中央病院とDMATでした。もっとも危険でもっとも重要な感染症対応の要とされたのは自衛隊だったのです。その自衛隊の防衛医科大学校の年間研究費は、2018年度で2億円程です(ちなみに東京大学の予算は2500億円ですが、これでも少なすぎると感じています)。世界は優秀な頭脳を奪い合っています。米国のスタンフォード大学は1兆円を超える研究資金が得られるため、この潤沢な資金を背景に多くの成果を上げています。
次世代の国の富を得るために国境を越えて優秀な人材を世界は全力で奪い合っています。その流れに逆行して財政黒字化を何よりも重視し、予算削減を至上命題とする日本は、技術先進国の地位を維持しきれなくなるのではないかと感じています。
自衛隊病院は新型コロナ問題でも「防衛の要」です。自衛隊中央病院の新型コロナウイルスの研究論文はとても価値の高いものですし、自衛隊が見せた感染対処能力は、生物兵器テロの抑止力にもなることでしょう。自衛隊病院でさらに多くの診療・研究ができるように、その資金繰りを少しでも楽にするために、政治家の皆さんにはぜひとも制度改正、法改正を頑張っていただきたいものです。おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
防衛医大・自衛隊病院への研究開発費
『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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