日本ダービーが終わり、3歳馬の頂点はコントレイルに決まった。しかし来年のダービーへ向けて、次なる戦いはもう始まっている。「2歳戦は難しくて取っつきにくい……」という方も、ここで挙げていく馬たちに注目して2歳戦を楽しんでいただきたい。また馬券だけでなく、POGの指名馬選びにも活用できるので、ぜひ最後までご覧いただきたい。
鈴木ショータ氏
即戦力アスコルターレは「タイセイビジョン級」
まず最初に挙げたいのが
アスコルターレ(父ドゥラメンテ、母アスコルティ、牡)。すでに5月20日の坂路で53.6-38.1-24.4-12.1と、この時期の2歳馬としては破格のタイムを出している。特に2F24.4というのが優秀で、現時点(6月3日)で、
栗東の2歳馬の中では最速のタイムだ。
筆者が現役のトラックマンだった頃も、5月の栗東坂路で好時計を出していた馬には注目していて、過去にもケイアイノーテックが52.2-38.3-25.0-12.5、ダノンファンタジーが52.5-38.0-24.5-12.1、そして昨年はビアンフェが54.1-39.1-25.0-12.3と、2F25.0以下の好タイムを叩き出していた。
そしてもう一頭、重賞2勝、GⅠでも勝ち負けを繰り広げたタイセイビジョンも、5月の時点で54.8-38.9-24.9-12.1という時計を出していた。同馬はアスコルターレと同じく西村真幸厩舎の所属。今年“タイセイビジョン級”の活躍を狙うならこの馬だろう。
ちなみに西村真幸厩舎は、開場一番の最も時計が出やすい時間帯に調教をするので、時計が速く出やすい。そのため、昨年はタイセイビジョンを軽視してしまったが、
どんなに馬場がいい状態だったとしても、2歳の5月時点での2F24秒台は評価しなければいけないと学んだ。その反省を踏まえて、アスコルターレを推奨したい。
ヴェルナー(父キングカメハメハ、母アディクティド、牡)も、すでに調教で素質の片りんを見せている。5月13日の坂路では53.0-38.7-25.4-12.7をマーク。一見、上記の馬たちよりも劣ったタイムに見えるが、こちらは追い切りの時間帯が評価のポイントになる。管理する
高野友和厩舎は、ハロー(整地)直前の最も馬場の荒れた時間帯に調教をするため、他の厩舎の馬よりも調教時計が遅めになる傾向にある。上記の西村真幸厩舎とは真逆の特徴だ。それを考慮すれば、上記の馬たちとも互角以上の能力を秘めている可能性もあるのだ。
全兄クルーガーはマイラーズC勝ちなど重賞でも活躍。1つ上の全兄サクセッションも、3歳の現時点で3勝を挙げている。兄たちはマイルでの活躍が目立つが、牧場関係者によれば、距離の融通は利きそうで、クラシックでの活躍も期待できそうだ。
研究熱心なオーナーがセレクトセールで選んだ馬
一発の魅力を秘めているのが
スワーヴエルメ(父ドゥラメンテ、母アイムユアーズ、牡)。母は2歳から活躍し、フィリーズレビューなど重賞4勝を挙げた。初子は2戦未勝利だが、2番子となるモーベットは、1.8倍の支持を受けた新馬戦を快勝。その後は気性的な難しさなども影響して勝ち切れていないが、着実にステップアップしてきている。3番子となる今回は、新種牡馬のドゥラメンテを父に迎えたことで、名牝ダイナカールの4×4というクロスが成立。サンデーサイレンスやキングマンボなどのクロスも発生しており、爆発力が期待できる。ただその反面、精神面、体質面での心配もされているが、現時点で関係者の話では、『落ち着いた気性で操縦性も高い』とのこと。
所有するNICKSは、
『セリのカタログや上場される馬の情報を全て記憶しているのでは』と、馬主さんの間でも話題にあがるほど熱心なオーナーとして有名だ。これまでもJRAで走った馬は、スワーヴリチャードやスワーヴアラミスなどの活躍馬も含め、21頭中14頭が勝利するという、高い勝ち上がり率で結果を残している。そんな名オーナーが2018年のセレクトセールで1億9440万円という高値で購入したのが、スワーヴエルメだ。
少し私情を挟むと、以前POGでスワーヴリチャードを指名し、勝手に一喜一憂して、ダービーでは惜しくも2着だったが、一緒に夢を見させていただいた。オーナーの逸話等を聞くと、余計に”スワーヴ軍団”を応援したい、という思いもわいてくる。競馬は馬が主役だが、好きなホースマンの情熱に乗っかってみるのもひとつの楽しみ方かもしれない。
元「競馬エイト」トラックマン(栗東担当)。学生時代には中央、地方を全場渡り歩き、フランス、香港、ドバイまで駆け回っていた、根っからの現地観戦好き。『競馬伝道師』として週刊大衆やモンドTV「競馬バトルロイヤル」などでも活躍している。
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