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「夏競馬は牝馬や芦毛が強い!」説は本当か、2万レースで検証してみた

芦毛は夏に強いのか

芦毛は夏に強いのか

 本格的に、夏競馬が始まった。競馬には様々な格言があるが夏競馬には「夏は牝馬が強い!」「夏は芦毛が強い!」という2つが代表的だろう。だが、果たしてこれらの格言が事実なのか、そして格言通りに買えば儲かるのか……

「夏は牝馬が強い!」説は本当か

 夏は牝馬が強いというのは競馬ファンなら、一度は聞いたことがある馬券格言だろう。以前冬競馬について書いた記事で検証した際に牝馬はパワーの要る冬場に成績が落ちることはあるため、相対的に夏に良さそうに見えるだけというのが筆者の見解なのだが。今回は実際にさらに夏に良いのかをデータで検証してみた  データの集計ができる1986年以降で牝馬限定戦を除く7~8月の約2万レースを分析した。単勝回収率は、牡馬(セン馬含む)が、67%、牝馬が78%、複勝回収率も牡馬が70%、牝馬が77%となっていた。牝馬は確かに、牡馬と比較して好走率や回収率も高い。だが、回収率も水準級でプラス収支にすることはできない。勝率や連対率は高いのに回収率が100%を超えていないのであれば「夏は牝馬が強い!」という説が多くの競馬ファンに知られていることによって配当的な妙味が薄れたのではないか? ということも仮説として考えられる。つまり昔は夏に牝馬を買っていれば儲かっていたのに、時代が経つにつれその妙味が薄れていったと想像できるわけだ。  そこで年ごとに調べてみたところ、良い年(2010年)で複勝回収率は90%、悪い年(1989年)で65%であった。しかし、年々悪くなったりする傾向があるわけでもなく年によって上下しているため仮説は成り立たない。つまり、昔から今に至るまで夏の牝馬を狙うだけで儲けられるほどオイシイわけではないのだ。

夏(7月8月)の牝馬複勝回収率。波こそあれ格言の普及によって近年回収率が下がっているわけではない

 では、夏の牝馬狙いは無駄なのだろうか。調べてゆくうちに牝馬が買える条件があった。それはダートよりは芝、長距離よりは短距離の成績が良いことを発見した。複勝回収率をもとに比較すると、芝では、牡馬69%、牝馬79%。ダートでは、牡馬、牝馬ともに72%。1000~1300mの短距離戦の場合も、牡馬66%、牝馬78%と、その差は大きい。つまり、芝のレースかつ短距離戦、が最も牝馬が優位になると予想できる。  その条件をともに満たすのが、芝の直線1000mのアイビスサマーダッシュ。過去19回のうち、牡馬7勝に対して、牝馬が12勝を挙げており、牝馬有利の代表的なレースだろう。全ての直線1000mのレースを分析しても、これまで牡馬が63勝だったのに対して、牝馬は145勝もしている。    このように、夏競馬では、無条件に牝馬を過大に評価することは危険である。特に、ダートや長距離戦では、牝馬の優位性も薄いので、条件にも気を付けて評価したいところだ。

「夏は芦毛が強い!」は本当か

鈴木ショータ氏

 夏の日差しが強い天候下では、光と熱の吸収が少ない白い馬体=芦毛、が有利なのではないか、という説が存在する。これも同じように、1986年からの約2万レース、総勢27万頭の毛色別データを調べてみた。すると毛色ごとの複勝回収率は栗毛74%、青鹿毛74%、青毛73%、栃栗毛72%、黒鹿毛72%、鹿毛72%、芦毛70%、白毛60%という成績になった。  なんとも微妙な結果になったのだが、諦めるのはまだ早い。芦毛と言っても、エイシンヒカリのように、黒っぽい毛色の芦毛もいる。個体差があるので、すべてを把握することはできないが、一般的に、芦毛は年齢を重ねるほど、白くなっていくことが多い。つまり、芦毛の中でも、年をとった馬ほど、より白く、高い回収率になるのではないか、と推測した。  年齢別のデータに絞ると、2歳72%、3歳73%、4歳70%、5歳65%、6歳59%、7歳以上60%という数値になった。仮説とは正反対で、白くなるほど、成績が下がってしまった。要因を考えてみると、やはり、人間が思っている以上に、毛色と気温に因果関係はない、というのがありそうだ。年を重ねて白くなっている=衰えている、という解釈もできるため、回収率も下降しているとも考えられる。  最後に、地球温暖化の影響もあるのではないか、と半分こじつけのような理論も考えた。そこで、8月の平均気温が初めて29度を超えた1995年を境とした1986~1994年と1995~2019年の2つのグループに分けてデータを集計してみた。  その結果、複勝回収率は、1986~1994年が64%、1995~2019年が72%となった。データとしては、日本が暑くなり始めた頃から、芦毛は好走し始めた、と考えることもできる。  しかし、残念ながら、細かく見ていくと、この理論は成立しそうになかった。8月の平均気温が29度を超えた猛暑年だけをピックアップしていくと、1995年58%、2007年75%、2010年51%、2012年81%、2013年59%と、年によっては水準以下の回収率になっていることもあった。細かく言えば、競馬開催日の気温や天気まで考慮しないといけないのだが、現状で地球温暖化の影響はそこまで芦毛の成績に影響を及ぼしていない、という結論になりそうだ。  以上のことから、「夏は芦毛が強い!」という格言は、信ぴょう性は全くない、と判断していいだろう。
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