仕事

上野アメ横「叩き売り店」の窮状。それでも“しゃべり”で勝負する

戦前は乾物屋。チョコレート商社にいた父が35年前に現在の形に

乾物屋

チョコレートの叩き売りの前は、創業以来乾物屋だった(志村さん提供)

 戦前に創業したが、はっきりとした開業時期は分かっていない。志村さんによると、元々は海苔やスルメを売る乾物屋で、初期の頃は他にも芋飴など幅広く手掛けていた。  先代の父がチョコレートを手掛ける商社にいた縁で、35年前に叩き売りを始めた。当初は声を出して注目を浴びることに恥じらいはあったが、客からは珍しがられて大うけ。花見会場として名高い上野公園が近くにあることから、宴席の前に叩き売りを楽しむサラリーマンでシーズン中はとりわけにぎわった。  10年ほど前に店を引き継いだ志村さんは「小さい頃から見ていて、かっこいいなあ~と。長男だったので自分が継ぐものだと思っていました」と振り返る。年末年始、花見シーズン、5月の大型連休。年3回のかき入れ時のうち今年は2つが既に終わり、志村さんは「(現時点で)壊滅状態です」と言葉少ない。  それでも店をたたもうとは思わなかった。通販やネットショッピングに商品を出品しているが、主軸はあくまで対面販売。コロナ禍でも方針は変わらない。

仕入れた商品は子どもたちへ、児童相談所に寄付

 花見と大型連休用に仕入れた商品は、代わりに荒川区内の児童相談所に無償提供した。休校になった子どもたちを何とか元気づけたい、と自ら申し出た。志村さんは「大人も子どもも辛い状況ですが、(チョコレートの寄付が)子どもたちの応援につながればうれしいです」と願っている。  気温が高くなる夏は例年菓子の需要が伸び悩む傾向だが、「先ずは落ち込んだ収益の回復を目指したいです」。受け継いだ商売を実直に行い、厳しい暑さを乗り越えるつもりだ。<取材・文・撮影/カイロ連>
新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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